2014/11/08

ビジネス視察的イオンモールプノンペンの眺め方(1):「カンボジア・ビジネス・パートナーズ」特集記事

先週末、カンボジアに進出する日系企業のためのBtoBガイドブック「カンボジア・ビジネス・パートナーズ」が発行となった。 半年に一度のペース(3月号と9月号)で発行されているそうで、今号が2号目となる。

「カンボジアに進出を考える企業やビジネスパーソンを支援し、BtoBを主としたビジネス情報を発信するフリーマガジン」(当雑誌ウェブサイトより抜粋)とのことで、主にビジネス視察の際に多くの方々が立ち寄る在カンボジア・ベトナム・タイ相談施設窓口(JETRO等)に配布されるらしい。 印刷部数は8,000部、とのこと。




今回、この雑誌に特集記事を寄稿させて頂いたのだが、当雑誌編集部の許可を頂いた上で内容を本ブログに転載させて頂ける事になった。
(かつ弊社IT事業についてのインタビューも掲載頂いた、感謝。)


記事のタイトルは
『イオンモールプノンペン開業 〜その示唆に富む舞台裏〜』

ビジネス視察的な目的でイオンモールを眺める時に、その舞台裏に思いを馳せると示唆に富んでるような気がしますよ、、というニュアンスのつもり、だった。。

改めて眺めてみると、ちょっと恐れ多すぎなタイトルだったような気もするし(自分でつけたタイトルだが・・)、かつ開業(本年6月末)から結構時間が経っているのでプノンペン在住者的には今更感がないでもない。(一応「開業して1ヶ月半」とか「本稿執筆時現在」的なワードは散りばめておいた。)

でもまあ、これから新規にカンボジアにビジネス視察に来られる方々が主な対象読者という事なので、今更感は気にしないでいいと自分に言い聞かせる事にする。

当雑誌を入手頂ければ(もう配布されているそうなので)いつでもご笑読頂けるのだが、在カンボジア・ベトナム・タイの進出相談施設窓口までそう簡単に出向けない方々もいらっしゃるであろう、、という事で下記転載させて頂きます。

以下、転載にあたり少々注釈。
・長いので2回ほどに分ける。
・(本ブログ的に)余計と思われる部分はハショる。
・せっかくなので、いくつか言い訳追記を入れる。


<「カンボジア・ビジネス・パートナーズ」特集記事 転載(前編)>
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本年6月末、カンボジアの首都プノンペン中心地に同国初となる巨大ショッピングモール「イオンモールプノンペン」がオープン。


直後の週末には一日10万人以上を集客するという華々しいデビューを飾り、その後約1月半が過ぎた(本稿執筆時現在)。



敷地面積 約68,000㎡、延床面積 約108,000㎡の地上4階建て。駐車台数約1,400台、駐輪台数約1,600台。
規模としては、隣国ベトナムのホーチミン市郊外に本年1月オープンした「イオンモール タンフーセラドン」(延床面積 約78,000㎡)の約1.4倍に相当する。

総合スーパー及び食品スーパーからなる・・(追記: 視察に来る方々のためイオンモールの詳細な施設説明を書いたのだが長いので割愛)・・・。

人口約178万人(2013年人口中間調査)の小都市プノンペンに、巨大な非日常空間が突如出現した格好だ。
ちなみに先述の「イオンモール タンフーセラドン」がオープンしたホーチミン市の人口は約780万人(2013年現在、各種調査機関推計)。プノンペン人口はその1/4以下という事になる。

(追記:ホーチミンの1/4以下の人口しかない小都市に、ホーチミンの1.4倍の規模のイオンモールが出来ました、と言いたかった。)


「イオンモールプノンペン」の店舗情報や見どころについては、各種カンボジア関連情報誌やブログ等の個人情報発信が数多く取り上げているだろうから詳細はそちらに譲るとして、本稿ではこの巨大ショッピングモール開業前のドタバタ劇と、開業後から現在までの経緯から見える、今後カンボジアに事業進出するうえで参考になりそうなポイントをお伝えしたい。


【開業前、すでに分かれていた明暗】


モール開業予定日の数か月前から、日系テナント事業者に限って見ても約50店舗(≒約50社)にのぼる事業者が、同じタイミングの店舗開店を目指し、ほぼ同じようなタイミングでその準備に乗り出した。

日本語を話せる人材から店舗スタッフにいたるまでのローカルスタッフ採用、各種材料や備品の物流手配、店舗の設備・内外装の工事と、各企業が準備にとりかかる順番もほぼ同じ。
日系・ローカル系含むプノンペンの各種現地業者には、一斉に準備スタートしたテナント事業者から、同時期に同様な業務依頼が殺到した。 

 プノンペンはまだまだ狭い街で、さらに狭い各業界(数社しかいないレベル)内はもちろん、その業界垣根すら軽く超えて、知り合いの知り合いは皆知り合い、と言ってよい状況だ。

本稿執筆時現在、在カンボジア日本大使館に在留届を提出した日本人はようやく2,000人を超えた程度(ベトナムは9,000人以上、タイにいたっては45万人といわれる)。
在留届を未提出の日本人も多く存在するといわれ、実際の在住日本人はその倍以上の人数がいるのでは、との推計も聞かれる。 

2,000人の倍以上という推計を信じて、仮に4,000人前後の日本人が実際カンボジアに在住しているとして、さらに仮にその75%の3,000人がプノンペンに在住しているとする。

その在住者5人が飲みに集まって、そのうち誰かが語った「ここだけ話」を、その5人各々がまた別の5人との「ここだけ」の飲み会で話して・・・という事を週に1回繰り返すだけで、5週間目には在住者全員に共有される計算になる。


(追記: 5 X 5 X 5 X 5 X 5 = 3,125 > 3,000。 2回目以降の飲み会の新規メンバーは4人では、、とか細かいツッコミは割愛お願いします)


職場やカフェでのお茶飲み話も考慮すれば、情報が全員に行き渡るのに要する期間はさらに短縮される。

小さな「プノンペン村」では計算上の話だけで言うと、ほぼ全ての「ここだけ」話が、ほぼ全ての住民にあっという間に筒抜けになってしまうのだ。


実際のテナント事業者同士も、お互い言葉通り「七転び八起き」な状況の開店準備に一喜一憂しながら、同じ船ならぬ同じモールに乗ってしまった戦友同士、その苦悩を共有する。

備品や食材を輸入するのに隣国タイ経由の陸路を想定していたら、タイミング悪く5月後半に勃発したタイのクーデターと、その火の粉を恐れた出稼ぎカンボジア人就労者達の15万人を超える大量一斉帰国が重なり、タイ国境の物流が完全に停滞、届くべき備品等が届かず工事が遅れるテナントも続出。

また、そもそもカンボジア人が持ち合わせている国民性や気質によるものなのか、工事を請け負うカンボジア人労働者達に差し迫る開業日に対する“アセり”が全く伝わらず、ギリギリまでのんびりとした空気の作業現場と進捗状況にキリキリと胃を痛める各テナント業者達。

それらリアルタイム・ノンフィクションの苦悩話が、在住者を交えた懇親飲み会でも発散され、それが臨場感あふれた「ここだけ」話に変異して小さな村に拡散していく。

結果、どのテナントのどの業務はどの業者が請け負っていて、進捗はかくかくしかじかな状況らしい、という赤裸々な実態が、ほぼリアルタイムに多くのプノンペン在住者に把握され、時には酒のツマミとなり、時には営業トークのネタになり、プノンペンのお茶の間を潤す香ばしい情報素材となっていた。

関与した業者からすれば、実名を貼り出される形での一斉公開テストを衆人環視の中で受けさせられていたような状況に近い。


タイのクーデターから現場指揮監督の諸事情まで、遅延の理由はさまざまあれど、実際のところプレオープン内覧会にしっかり間に合った/グランドオープンには何とか間に合った/現時点(本稿執筆時点)でもまだ開いていない、などテナントごとに開店準備の巧拙の差がくっきりと露呈された。

実際、プレオープン内覧会にしっかり間に合わせられたテナントは数少なく、全体の2割に満たないとされる。 

結果、620日のプレオープン内覧会のあと28日のグランドオープンまでの間、もともと予定されていたソフトオープンは中止されモールはクローズ。 間に合わなかったテナントの最後の仕上げ工事に充てられる事になった。

プレオープン内覧会に開店を間に合わせ、ソフトオープン期間の営業準備までしっかりしていた優等生テナントはむしろ割りを食う形となり、その期間のため用意した食材在庫などの保管や処分に頭を悩ませたという。


それら悲喜こもごものストーリーも添えられた「業者実力公開テスト」の結果は、実質的にはプノンペン在住者の多くに実名入りで公表されてしまっているようなものだ。

多くのプノンペン在住者は一部の実体験と多くの「ここだけ」話から、これら業者のウデと実績をかなり正確に把握している事になる。
裏を返せば、業者にとって「ウデの見せ所」となる一斉テストでもあったモール開業準備業務。 そのテスト結果の「明暗」は多くの在住者に共有されているはずだ。 

今後カンボジアに店舗型の進出を考える企業にとって、そのあたりをうまく聞き出せれば、かなり有用な事前情報となりうる、かもしれない。

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そして【開業後の明暗】の眺め方について、次回に続く。。。


2014/10/29

仁義なき”商号”ガチバトル(?):気がついたら決着(?)

本稿でも何度かご紹介させて頂いている、意外と厳しいカンボジアでの商号登記制度。

それに関連したトピックとして、なぜか同じ商号をぶつけ合ってほぼ同時期に開院された歯科医院 in プノンペンのお話を、今年7月頭にアップさせて頂いた。

(その後、自社事例も交えつつカンボジア商号登記制度のご紹介もさせて頂いた。)


その回のブログにて「この歯科医院のガチンコ商号バトル(?)のオチがどうなるのかちょっと注目している」という感じで書かせて頂いた手前、その後どうなったのか、なんとなく気にはなっていたが、わざわざ確認するアクションまでは取れずにいた。

で、そのオチ(?)は意外な形でサクッと知らされた。

9月末セミナーの際、講演終わった後にお声かけ頂いた参加者の方々の中に、その歯科医院(のうちの一方)の方がいらっしゃって、手短かな時間の中、端的にいろいろと教えてくださった。
・ブログも見ていてくださり感謝です。


で、結論的には、どうやらバタナック・タワーに入居されている方が正式に「K's DENTAL CLINIC」(※ sは小文字)の商号を授与された、、とのこと。

教えて頂いた事をまとめると、どうやらカンボジアにおける医療機関の登記には、会社登記を行う商業省(Ministry of Commerce)以外に、保健省(Minitstry of Health)での登記も必要で、それをいち早く行ったのがその「K's DENTAL CLINIC」さんの方だった、、ということらしい。

ちなみに弊社JCGroupは現状、保健省絡みの医療関係事業は手がけていないので、上記に関する制度・規則等の知識や経験は持ち合わせていない。 
また、それを確認する時間も(本業にないので)わざわざ割けない、、という状況の中で、結果を最も簡単に確認できそうな方法として思いついたのは、

「じゃあ、イオンモールプノンペンに入っている『K'S DENTAL CLINIC』さん(※Sは大文字)の看板はどうなっているんだろう?」

、、を見に行けばいい、という簡易ソリューション。 
対偶の真偽を示せば元の命題の真偽が示せる、という、「PであればQ」が云々という感じで昔に習った禅問答的なアレの発想だ(大げさ且つ適当ですw)。

とはいえ、最近なかなかイオンモールにも行く機会がなかった中、今月半ばにイオンモールで最も繁盛している日系飲食店(の1つ)の社長様と会食させて頂く機会があり、しめたとばかりに少し早めにモールに行って、件の歯科医院を見に行った。


イオンモール1階(日本的には2階)の「K'S DENTAL CLINIC」さん。
一見したところ商号に変化は見られない。

外から眺める限り、商号に変化はない・・ように見える。 

でも店の奥に(上記写真の中央やや左)に店内の看板のようなものが見える、、、ということで、日本的な奥ゆかしい節操・遠慮の感覚をすっかり失って久しい筆者はズケズケと店内にお邪魔し、店内にいたカンボジア人スタッフに写真撮影の許可を頂いた上で以下;


「CAM K'S DENTAL CLINIC」・・・。

頭に「CAM」が付いている。 ・・なるほど。


その後なんとなく、前回ブログでご紹介した際には両医院の広告が上下キレイに並列されていた老舗フリーペーパーの最新号を眺めてみると、むしろこのイオンモール側の歯科医院さんの広告が「K'S DENTAL CLINIC」という名前のまま大きく出ていたりして、逆にバタナック・タワー側の「K's DENTAL CLINIC」さんの広告は見当たらなかったりして。。。(筆者の見落としの可能性あり)


決着がついたのかどうか、そもそも何の決着なのか・・・はさておき、日系医院の進出が旺盛なのは在住邦人皆様には喜ばしい事なので、双方ぜひ頑張って頂きたい。 

また、本件についての前回ブログには、実際8月にカンボジア視察された別の日系歯科医院の先生からも実名入りコメント頂いた。 この場を借りて御礼申し上げます。

飲食店に限らず、歯科医院にとってもプノンペン競争環境は熾烈なようだ。 
ライバル同士が切磋琢磨して成長しあえる市場、、となる事をカンボジア在住者の1人として淡く期待したい。 

そろそろ歯の定期検診いかないと、そういえば。



http://yoroz-cambodia.jcgroup.asia/2014/07/blog-post.html

2014/10/23

彼等が日本で諦めた事

毎週のように飛び石祝日が続くカンボジア10月後半。 で、11月頭は水祭りの大型連休(11月5日〜10日、振替休日含む)。
 極めて仕事効率が悪くなる期間だが、まあこれもカンボジアで事業する上で所与条件の1つ、、と割り切って何とかやりくりをする。

祝日でオフィス出社はなく(打ち合わせや外回りはあるけど)、自宅で最近毎日は眺めなくなった日経新聞(ネット版)を何気なく眺めてみたら気になる記事が。
ちなみにオフィスで新聞を読む気には(時間があったとしても)昔からなれない。

シティバンク銀行が日本で個人向け業務から撤退する事に関する記事。 

これでゴールド口座による海外送金手数料無料サービスもきっと終わってしまう、、というのは筆者にも多少の影響はある。
日本のシティバンク銀行ゴールド口座(海外送金手数料なんと無料)から送金し、カンボジア側ではプノンペン商業銀行(PPCB、SBIグループが大株主)の口座(着金手数料がなんと無料)で受け止める、という夢の「送金手数料ゼロの日本→カンボジア送金」もついに実行する機会がなかった。

まあそれはさておき、そのシティに関する記事が以下;

【日経新聞2014/10/23夕刊
ーーー
シティグループが日本など世界11カ国・地域で個人向け業務をやめると発表して1週間あまり。

日本の受け止めはどうか。
「余裕を失ったシティが撤退を迫られた」との声が多いが、残りの国々の顔ぶれをみると別の思いも頭をよぎる。

コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ニカラグア、パナマ、ペルー、米領グアム、チェコ、エジプト、ハンガリー。先にはギリシャやスペインでも個人事業を売った。
世界3位の経済大国・日本が、これら経済的には辺境の国々とひとくくりにされたことは、ある種の衝撃が伴う。
・・今後、個人業務を続けるのは24カ国・地域。経済や人口の伸びしろが大きい市場が目立つ。
アジアでは中国、韓国、香港、台湾、インド、インドネシア、タイ、シンガポールなど12市場。中南米ではメキシコ、ブラジルに加え、アルゼンチンやベネズエラ、欧州では英国、ポーランドにロシアまで入った。
・・国民が豊かになる国では個人金融に将来性がある。踏ん張って業務を残す手はあるはずだが、日本などはその対象から漏れた。
ーーーーーー

シティグループが日本で「諦めた」ことは何だろう。
国として借金(国債発行残高)は、最近とうとう1000兆円を超えた、くらいにあるが、一方の個人(家計)金融資産も1600兆円を超えている。 「宝の山」の規模で言えばコスタリカやエルサルバトル等が束になってもその麓にすら及ばない。
たぶん、シティがいたった結論は、その巨大な「宝の山」への入り口のカギを持っている日本の高齢者達の心を開かせる事が自分達にはできない、ということではないだろうか。

その心を開かせる方法は実はとても簡単で、すでに多くの成功事例が解説付きで世に氾濫しているが、それらの方法はシティグループには絶対に採れない手法だった。


(1)漢字か平仮名の名前の銀行になること
(2)困った孫を装って振り込みさせたり、荒唐無稽な不動産投資を持ちかけたり、など法律の枠をはみ出して営業すること

シティグループですら溶かせなかった巨大な氷山。 当面は邦銀口座を通じて日本国債をさばく元手になるか。 そういえば以下の記事も同じ夕刊に。

ーーーー
短期国債の入札、初のマイナス金利

・・政府が利子を支払わずに国債を発行できる異例の事態だ。発行金利はマイナス0.0037%で、政府はこの分だけお金を受け取って借金することになる。
・・日銀が市場で国債を大量に買っており、市場に流通する国債は極端に減っている。金融機関は担保などに必要な短期国債を確保できなくなっており、買いが殺到した。
ーーーーー


・・なんとも言えないが、気になったので(また、明日には忘れていると思うので)備忘記録的に本稿にアップ。 明日からまたがんばろうinカンボジア。

2014/10/19

講演あとがき(終):悪者も愚者もいない憂鬱な世界

前々回のブログでかなり中途半端な書き方をした(というかただの前振りしか書かなかった)件がなんとなくまだ気になっていた事もあり、更に最近、またカンボジア進出日系事業者(飲食店)が店仕舞いされたという話を聞いたりもしたので、前振りした話の本編を少し。
注:かなりはしょっていますが・・すみません。



カンボジア(に限らず海外全般に)進出した企業や事業者の多くが、思うようにビジネスが進まず、やがて衰弱し撤退していく様を、アリーナ席からじっと見つめている傍観者達が抱く卒直な感想は、だいたい以下に収束される(と思う)。

「なんで(進出をあおる人たちの)口車に簡単に乗ってしまうんだろう」

「なんで(事業経営者のくせに)もっとしっかり事前調査や準備をしないんだろう」


自身で事業をやった事がなかったり、ひいては働いている身でもなかったり、老若男女・様々な立場の方々も含まれる傍観者皆様をして、

「なんでこんな簡単な事が分からず、当たり前の事ができないんだろう?」

と感じさせてやまないカンボジア日系進出企業・事業主。

卓越した話術とトリックを巧みに操る詐欺師達と、素人でもわかる道理すらわきまえてない放漫ボンボン経営者との、三谷幸喜の映画のようなコミカル悲喜劇が日々繰り返されるカンボジア首都プノンペン、、、これって本当だろうか。


筆者が存じ上げている方々に限っていうと、日系企業のカンボジア進出支援に取り組まれている方々はその事業に真摯・真剣だ。  日本でしっかりした事業基盤や経験を持たれてカンボジア事業に取り組まれている経験豊な経営者も数多くいらっしゃる。 

実際のところ悪徳詐欺師や経験不足な経営者も存在するだろうが、現状プノンペンを覆っている「日系企業の憂鬱」の大きな要因になるほどの影響力はない気がする。 目立つ事例もあるにはあるが、あくまでまだ特殊ケースの域を出ない。

皆が思うほど経営者はバカでは勤まらないし(筆者が当地で仲良くさせて頂いてる方々は尊敬できる経営者ばかりだ)、そんな経営者を手玉に取り続けられるハイレベルな詐欺師もたぶん存在しないのだ(筆者が知らないだけで、中にはいるかも知れないが)。


ではなぜ、皆が似たような憂鬱な状況に似たようなプロセスを経てハマっていってしまう(ように傍観者には見える)のだろう。

傍観者の1人でもある筆者が考えるに、各事例毎の諸事情は個別にあるとしても、その更に下層に横たわる構造的な原因がある(気がする)。 それはヒトの習性にまつわる極めてシンプルな話だ。

(1)
 ヒトは、見たい物を見たいようにしか見ない(聞きたい事を聞きたいようにしか聞かない)生き物である。

(2)
 (1)の習性による思い込みを強制的に全否定してくれる情報流入がない。


(1)はヒトに備わっている本能的な習性で、それに抗う事はヒトである以上極めて困難だ。 かなり意図的に意識するか、強い拘束力をもって強制でもされない限り、無意識にヒトの脳はそういう動きをする作りになっている。

(2)はカンボジアの環境要因だ。 
日本のように膨大な情報が多方面から(自ら取りにいかなくても)脳内に強制流入して来る情報社会では、気持ちよい勘違いを持続させるのは難しい。
が、そもそも情報流通量が少ないカンボジアでは、見たいものだけを気持ちよく見続ける事ができる(見たくないものはわざわざ見ないで済む)。


事実にはいろいろな側面があって、どちらから光を当てるかで見え方が変わる。 

360度全方位から撮った映像を眼前に突きつけられれば全体を見ざるをえないが、例えば情報の出し手と受け手が「見たい」と思っている側面が同じであれば、その裏側に光を当てなくても誰も文句は言わない。 むしろ当てると文句を言われる事もある。

「宝くじは買わないと当たりませんよ」という話に嘘はない。
でも「宝くじで一等が当たる確率は日本で交通事故死する確率の1/300未満ですけどね」という話は、売る側に話す義務はないし、また意外な事に、買う側にしても聞きたくない話だったりする。 


進出する側も、それを支援する側も、自らの事業に人並み以上に真摯に取り組んでいる。
マジメで優秀な経営者や支援者であればあるほど、自らの成功に信念をかけて臨んでいる。 普通のヒトのよりも(1)がそもそも強いのだ。

だから、支援する側も、真剣に誠意を持って、自ら信じる側面に強い光を当てる。
全員が全員、悪意をもって見せたい側面だけ見せているわけではないのだ(たぶん)。

一方、進出する側も、その支援する側の真剣さや誠意を感じるし、また本人自身も本能的に見たい側面が同じであったりする(これは無意識)。 そこで事業家同士、魂の共鳴が起こったとしても何ら不思議はない。


更に、カンボジアに来たばかりのタイミングで、ものすごい運命を感じさせる幸運な出会いがあり、それが(1)をますます増強する。

経験豊富で有能な進出支援者に会えてよかった、偉くて有力な現地パートナーが味方についてくれた、ものすごく性格が良くて日本語が上手な現地スタッフを採用できた、etc。

ヒトは、地球上に60億人以上のヒトがいて、自分がその中の1人であることを、頭の中では理解している(少なくともほとんどの日本人は)。

でも、自分の目の前に広がる世界しか世界として認識できないから、そこで起こる諸々の臨場感は圧倒的で、潜在意識的には常に世界の中心は自分である。

そんな自分に、他人には訪れるはずのない運命的な幸運が訪れたとしても、それを勘ぐったり疑ったりする事は、本能的に極めて難しい。 
自らリスクをとってカンボジアくんだりまで乗込んで来た自分に、そういう運命の出会いが訪れてもおかしくも何ともない。 成功した経営者には、だいたいそういう運命の出会い話が付き物ではないか。


ちなみに筆者にも訪れた事があるくらいだ(もう6年も前の話だが)ww

当時、筆者に訪れた(と本当に思った)望外の幸運は、その後6年間にわたりお会いした数多くの日本人から「この出会いがあったからカンボジア出ると決めたんです!」とか「ものすごく有能なカンボジア人がウチに入ってくれまして!」とかアツく語られるのを聞き続ける事で、悲しい事に雲散霧消してしまった。 
(上記(2)でいう、思い込みを全否定してくれる情報流入とはまさにこれである。)


狡猾手練な悪者も、救いようのない愚者も、実は(それほど)いない。 皆がマジメで真剣であるが故に、皆が憂鬱になる不思議な世界となっている(気がする)プノンペン。


・・・ここまでクドい長文を読んでくれた方に、今回の話で唯一役に立つ(かもしれない)処方箋を、以下2行でお伝えしたい。

良くも悪くも、自分の目の前に現れている事象は、だいたい他人の目の前にも現れている。 

そう思っているだけでも、回避できるワナはいろいろあるはずだ。
 

さて明日からもまたがんばろう。

2014/10/14

1,700億円の夢の行方:シェールオイルとカンボジア

カンボジアの首都(先進国基準で見ると小さな地方都市、というか街)と地方(先進国基準で見ると残念ながら分類先がないレベルの僻地)を行ったり来たりばかりしていると、普段見て触れるニュースが極めてニッチなスーパーローカルネタに偏りがちなので、出来る限り大局高所的なニュースの摂取も心がけるようにしている。

首都プノンペン中心地で奮戦されていた鶏鍋屋さんとか開店したばかりのラーメン屋さんとかたこ焼き屋さんとかが店仕舞いされた(らしい)のは残念だ。

アセアン進出ブームに湧く日系企業・事業家・若者皆様のカンボジア進出ラッシュにまつわる不具合な話も、何とか解決・解消される事を願ってやまない。

※なお、「不具合」といっても「悪いカンボジア人もしくは(日本人から見て)カンボジア在住外国人にダマされて困った」という類の話はほぼ皆無なので、カンボジア側に何か落ち度がある話はたぶん極めて少ない。

でもまあ、これらの香ばしいローカルニッチなニュース素材は、目や耳を塞いでいたとしても骨伝導みたいに脳内に直接配信されるようなスモールワールドに在住しているので、特に能動的に摂取を心がける必要はない。

で、前回ブログのように唐突に「円安ってどうよ」的な話(カンボジアからは遠いように見える話に)思いを馳せてみたりするわけだが、そんなモードの昨今、個人的に強く興味をそそられたは「シェールオイル」のお話だ。 

ちなみにまた「カンボジアから遠い話」のように感じられるかもしれない。 
確かにシェールオイル・ガス自体はカンボジアとは遠い。 けれど、ニュースになった話の原因構造自体は極めて近い(気がする)。 
筆者は資源系に関する知識(と興味)はほとんど持ち合わせていないので、興味をもったのはその構造の部分だ。
(だから本稿のラベルは「カンボジア時事」にしておく)


日本の5大総合商社の一角、住友商事が、9月末にシェールオイル開発で通算2,400億円の巨額損失をたたき出す事を公表した。

2015年3月期の予想利益が2,500億円だったそうだから、ほぼそれと同額の損失をはき出す事を宣言した格好だ。 
(懐かしい会計士的な発想によれば「ということはその翌期にはき出す損失もまだ残しているんだなきっと。。」とか邪推してしまったりもする。)

「投資決定は極めて慎重に進めたつもりだが、見通しが甘かった」というような反省の弁を社長が述べたとのこと。
4つの事業で大きく損失を計上するらしいが、そのうち資源開発関係は3つ、最も大きいのが米国テキサス州でのシェールオイル開発で、その損失総額は1,700億円、、らしい。


1,700億円というと、いまカンボジアでイケイケ業界筆頭といわれるマイクロファイナンス機関(≒消費者金融機関)全42行の貸出しローン金額を全部足した合計値とほぼ同額だ。
20143月末残高合計で1,516.36百万米ドル、1ドル≒110円換算で約1,670億円Cambodia Microfinance Associationのホームページより)


ちなみに、シェールオイルとは、頁岩(けつがん=シェール)という岩盤に閉じ込められた形で残っている石油の事で、シェールガスはその頁岩から天然ガスを取り出したもの、らしい。 
どちらも以前は取り出すことすら難しかったが、最近になって採掘する方法が編み出され、石油に代わる新エネルギーとして期待が高まっている、らしい。

先述の通り、そのシェール云々自体については筆者も全く知見がないし、カンボジアからも遠い話に感じられるが、「なんでそんなに大きな損失を出してしまったのか」についてのコメント各種に、不思議な「既視感」を感じてしまう。


「(後発ゆえに)なかなか資源メジャーにパートナーとして相手にされない・・後発商社であり、世界の資源大手に比べ情報が少なかった」(住友商事 中村社長)

「住商は大手商社の中で資源開発は後発組。このため関係者の間では”大手に追いつこうと焦ったのでは”との指摘が出ている」(経済記事)

「(非在来型のシェール鉱区を開発案件として)買った時期がブームの真っ最中で、取得コストが高かった面もあるのでは」(経済記事)

「資源ビジネス参入の遅れが、構造改革の遅れにつながった」(関係者)



 「何やら皆もやってて儲かりそうだ、早く合流しないと乗り遅れる」
・・という高揚感とアセりが相互増幅し、且つそういうモードに乗じてすり寄って来る、自薦・他薦問いません系の有象無象の”識者”の甘言にも揺すぶられつつ、結果として由緒正しい大企業なら「通常なら絶対しない」ような意思決定の連続が積み重なって1,700億円・・。
ウン億円単位でセシめた”識者”が、どこかカリブ海のリゾートあたりでニンマリとドンペリでも空けていたとしても不思議ではない(だろうか?)。


似たような話はおそらく古今東西、枚挙にいとまがない。
人間の脳が石器時代のそれから大して進化していない事を考えると、似たような状況の中で、似たような立場のヒト科霊長類が下す意思決定は、ほぼ似たようなものにしかなりようがないからだ。 
結果として生じるインパクトだけが、産業革命以降の人間社会の進化(人間の進化ではない)のおかげで巨大(金額換算で巨額)になっているだけだ。


大手総合商社がテキサスを舞台に踊ったシェールオイルの夢物語は、そこで働く全従業員(連結グループベースで約72,000人)の1年分の汗の結晶(今季の予想利益)を吹き飛ばした。 
そこまで壮大な夢物語にはなかなかお目にかかれないないとは思うが、それと相似形をなす小型バージョンがいくつか潜伏していたとしても不思議ではない今のカンボジア。

1,700億円という金額がちょうど符号していたから例にあげたマイクロファイナンスinカンボジアに限らず、それが飲食だろうが不動産だろうがXXXXだろうが、有象無象の人間達が似たような状況で業を営んでいる以上、似たような話はきっとどこかでもう芽吹いている。

似たような状況に陥らない事が極めて難しい事は、大なり小なり連綿とヒトの歴史が証明している。 そういう状況に陥らない唯一の予防策は、そういう状況になっている頃のタイミングを上手く見計らってその状況に近寄らない事、くらいだろう。 
では、そういう状況になっている頃とはいつなのか、、それはそれがみんなの話題に上る頃(今でしょ?、、古いw)、、という事だろう、たぶん。

酔っぱらいの禅問答みたいになりかけている(もうなっている)ので今日はここでお開きとさせて頂きます。。 なんかこういう話じゃなくて書く話があった気がするが、まあ良いか。


PS
資源の「埋蔵量」とは「技術的かつ採算的に採掘可能な資源量」。

「存在はしているけど採掘したらおカネがかかりすぎて元が取れない」、つまり採算的に採掘不可能な資源は「埋蔵量」としてカウントされない。

だから、技術が進歩して(技術の値段が安くなって)採掘して生産して元が取れるようになったら、それまで「埋蔵量」に含まれていなかった資源が「埋蔵量」になる。つまり「埋蔵量」は増えるのだ。

ちなみに「埋蔵量」としてはカウントできない例として「海水から採取できる金」があるらしい。 多額のおカネを投じても膨大な量の海水からチョットしか採れないから誰もやらない(つまり埋蔵量とは言えない)という類。

更にちなみにアメリカは、ここ数年のシェール革命のおかげで、自前の「埋蔵量」が莫大に増えたそうだ。 例えば先述の巨額な損切り敢行にいたった大手総合商社のここ数年間の奮闘も、きっと覇権国アメリカの国力増強に多いに貢献している事だろう。

 ・・という事らしい。
今回の件で関連情報を眺めていてとても勉強になった。地球はどうやらまだまだいけるようだ & やっぱり米ドル万歳♩