2014/01/30

カンボジア人に「5S」、、の効能

今年に入ってすぐの話だが、弊社JCGroupの農業事業拠点であるバッタンバン事務所にて、日本人エンジニアを招いてのメカニック・トレーニングを行った。

少々背景から説明すると、弊社は日本の国際協力機構(JICA)による
「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」
に、現地パートナーであるカンボジア企業として参画させて頂いている。

2012年にカンボジア案件として採択された
「農業機械化による収量拡大と農家の自立化支援」プロジェクト
が弊社が参画している案件だ。 
・以下リストの3番目に記載されている案件である。
(参照)第4回協力準備調査(BOPビジネス連携促進)採択案件リスト

案件スタート当初(というか企画段階から)からお手伝いさせて頂き、もう1年となる。

JICAが支援するBOP(Base of the Pyramid)ビジネス、、って一体? という問いへの説明はJICAさんのサイトをご参照頂きたい。

で、本案件の主担当企業(提案を通された代表企業)であるネットオフ株式会社のカンボジア現地駐在員エンジニアの方が、弊社のメカニック達を「日本流」に鍛えてくださるという趣旨でトレーニングに来て頂いた、、という大変ありがたい話。

技術指導に主眼を置いたトレーニングだが、やはり日本流ということで、まずは「5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)」の授業から。 

ここはせっかくの機会なので、メカニックだけでなく弊社スタッフ全員で参加。
まずは「5S」から

バッタンバン事務所スタッフ総出で参加。皆けっこう真剣。
果たして本当にわかってくれたのかどうか。。。 ただ、カンボジア人達は自分達が知らない「それっぽいこと」を「タダで」学べる事に素直に喜ぶので(当社比)、講習後は目を輝かせて「勉強になりました、これから5Sします!」というトーン。


で、何がその後よくなったか、、というと、確かに朝オフィスの前をホウキで掃除していたり(たぶん自発的に持ち回り決めたりしている)、ゴミ箱にゴミがたまらなくなったり、、と、まだ一ヶ月経たないからかもしれないが、それなりに「5S」している感じはある。

それも十分に有難い事だが、何より自分がラクになったのは、指示を出す方が「5Sしてるか?」という言葉を使えるようになった事である。 

ちょっと気が付いた諸々のこと(ホワイトボード消し忘れ、電話へのお粗末な対応、備品の不足、指示した宿題のやり漏れ、etc)を注意するときに

「5Sしっかりやらないとダメだろ?」

と言うことで、「きっちりしないとダメ」というトーンが全般的に通じるようになった。。。これ、外国人スタッフを管理するうえでとてもラクなツールである気がする。
・「5S」の効能は、実はここにあるのでは・・。


で、肝心の技術トレーニングは、、、というと、実はこっちの方が大変である。
工具の正しい使い方を伝授。。。するが、、。

カンボジア人は、自分達が全く知らなかった「5S」のような知識を教えてもらう事は結構好きである(当社比)。 あるいは家族や友達にひけらかす知ったかぶりネタになっている、、かも知れない。

一方、自分達がわかっている(つもりの)事については、かなりプライドが高い。
日本の優秀なエンジニアが来て正しいワザを教えても、自分の我流なやり方と違うと、意外と素直に受け付けない。

まあ、実際に正統なワザを試してみて、我流より全然やりやすいと、素直に「おお!」となるのだが、、トラクターの運転しかり、工具の使い方しかり、けっこう面倒である。

そんなメンバーに根気よく指導いただいた日本人エンジニア様に感謝。。また宜しくお願いします。



2014/01/24

話が違う大事な話(3)

3回も続けるつもりはなかったこの話。 
面白く読んで下さっている、という声も一部、有難くも奇特な方々から頂いておりますが(本当に感謝!)、落とし所としては今回が旬かと思われるので今回で締めます。


前回ブログで、要は日本では以下の図式になってしまった事までお話した。


 場所   作る(費用)  売る(収益)  利益  
 国内    8千円   →  1万円    2千円     
       (①)
       ↓(海外生産シフト)
 海外    75ドル  →  100ドル    25ドル  
       (②)            (③)


前回ブログまでは、国内で売る事を論点から捨象していたので「国内 売る(収益)」は空欄だったが、実際は国内でも売れているので(むしろ日本は依然として巨大なマーケットだ)、仮で1万円という数値を入れてみた。 
論点となる部分の連番(①〜③)は前回までの通り。


「円安来たらば福来たる」と説いていた円安待望論者の夢と希望は、上記図式の「海外」の部分を、以下のように円換算した場合の「500円アップ!」に託されていた。


        作る(費用)  売る(収益)  利益  
(ドルベース)   75ドル  100ドル  25ドル
(
円ベース)     ↓       ↓      ↓
1ドル= 80円     6千円      8千円      2千円  
 ↓ 「円安」      ↓      ↓      ↓「500円アップ!」
1ドル=100円    7500円      1万円       2500


が、「費用75ドル   売上100ドル  利益25ドル」は、「じつは円に戻されない」という事が、本当に円安になってきた今とうとう暴露されてしまった。(前回ブログ参照)。 

日本で円で作って海外にドルで売る、というのはとっくに(海外生産シフトで)幻想となっているし、海外生産・販売の結果(利益)が円に戻されて「500円アップ!」というのもやはり幻想だったのだ。 


というわけで、冒頭の図式(以下に再記)に戻るわけだが、繰り返し述べているとおり③の部分は25ドルで完結なので、ここに福音をもたらす円安効果はない(円高も円安も関係ない)。

 場所   作る(費用)  売る(収益)  利益  
 国内    8千円   →  1万円    2千円     
       (①)
 海外    75ドル  →  100ドル    25ドル  
       (②)            (③)


では、円安はもう日本にとってどうでもいいのか、というとそうでもない。
500円アップ」という都合のいい方の話は幻想であったが、皆が気付かないフリをしていた「都合の悪い方の話」があるからだ。

①の8千円は、国内でモノ作りをするための費用だ。
ところで、日本は国内でモノを作るために必要な原材料の多くを、海外から買って来ている(つまり輸入している)。

たとえば、国内のモノ作りに必要な原材料のうち、海外からの輸入に頼っている原材料があったとして、その買値が30ドルだとする。

1ドルが80円→100円になれば、円で計算した買値は2400円→3000円になり、費用は大きく跳ね上がる。 

8千円の中身には、円換算されたドルが隠れているのだ。


しばらく前まで、日本は輸出で大儲けしていている貿易黒字国だったはずだが、最近は新聞でよく「貿易赤字が年間10兆円を超えた!」等と騒がれ始めている。

貿易赤字とは、要は海外からモノを買うため支払う(出て行く)お金(円ベース)の方が、海外にモノを売って受け取る(入って来る)お金(円ベース)より大きい、ということだ。

原発が動いてないせいで、火力発電に頼る部分が大きくなり、火を燃やすための原油や液化天然ガスを海外から買ってくる量が増えてきている、というのが主要因でよく語られている。 

海外から買うモノは、円安になると円ベースで高くなってしまう。 
買う量も増えて、さらに円安で高くなる、というダブルパンチで、海外に払うお金が増大しているのだ。


つまり、先ほどの図式でいうと、円安になると①が高くなってしまう。
 
こんな単純な「円安の不都合な話」、今までなぜあまり騒がれなかったのだろう(騒がれていたのにカンボジアにいて聞き逃しただけだろうか?)。



さらに、円安・円高とは関係ない世界、海外(ドルベース)で、今までのように安くモノが作れなくなってきている。

カンボジアのデモ&ストの話は、以前のブログで少し書いた。

先ほどの図式だと、海外でのモノ作りコスト(②)が長い事75ドルにおさえられていた。
安く作れる主な理由は、海外の労働力調達が低コストで済む(労働者の給料が安い)ことだ。

が、そんな状況がいつまでも続くわけがない。


実際、カンボジアのような後進国であっても、経済が活性化し、昔と違って皆が少しずつ消費を楽しむようになった。 毎日生き延びるのに必死だった時代から(ほんの十数年前だが)、生活を楽しみ将来を夢見られるようになった。

カンボジア人ですら、スマホ片手に世界の情報に簡単に触れる事ができ、世界で何が起こっているのか、自分と同性代の外国人は先進国で何を楽しんでいて、今の流行最先端は何なのか、を目の当たりにするようになった。


彼等は無個性多数の「労働力」ではなく、個々の人格を持った「人間」だから、ロボットと違って夢や希望、嫉妬や妬みなど豊かな感情の芽を有している。

情報が遮断された昔の閉鎖社会ならいざしらず、スマホを通して見える外の世界を含めた周囲と自分を常に比較し、それらの情報によって増幅された感情の芽は大きく育つ。 

そしてついには、給料を上げて欲しい、待遇をよくして欲しい、と、職を賭して、どころか命がけで、外国人雇用主に切に願い出てくるのだ。



・・・このあたりを書き始めると長くなるのでここでちょっとストップして、お題の「話が違う大事な話」を、以下の図式からまとめると、


 場所   作る(費用)  売る(収益)  利益  
 国内    8千円   →  1万円    2千円     
       (①)
 海外    75ドル  →  100ドル    25ドル  
       (②)            (③)


「話が違う」のは;
③がアップすると期待していた円安効果 幻想だった
①が円安で高くなる事があまり語られなかった →実際、円安で高くなってきた
②は安いままのはずだった → 人件費含め高くなってきた


ということは、昨今の円安&アジアの気運は、どうやら以下のとおり、費用が高くなる効果にしかつながらない、ということになるようだ。


 場所   作る(費用)    売る(収益)    利益 
 国内     ↗          →       ↘
    (円安で輸入材が高騰) 

 海外      ↗             →       ↘
    (現地コスト値上がり)   
      

財界の偉い人が年始から渋い表情を見せていたは、上記の「不都合な真実」の図式が、いよいよ現実化し始めたのが真因ではないだろうか。


・・何か全く救いのない話を、長々と書いてきたように見えるかもしれないが(自分でそう話しておいて何だが)、よくよく考えてみるとホントはそうでもない。

円高だ、円安だ、などの為替の上下(による計算上の利益の上下)や手の届かない海外の賃金動向に一喜一憂する、というのは、よく考えれば「自分と関係ない何かに依存」しているだけである。 

「円安になって利益増えたらいいな」とか「海外賃金安くて利益増えたらいいな」とか、よく考えれば自分の努力とは関係ない要素への他力依存の真骨頂だ。


ビジネスは古今東西、売上をあげてなんぼである(自分に言い聞かせる)。

今回は論点から「売る(収益)」をあえて捨象していた(だから上の図でも→のまま)。
が、要はビジネスなんだから、王道に回帰して以下の図式を目指せばいいのだ。


 場所   作る(費用)     売る(収益)      利益   
 国内     ↗           ↗↗         ↗
    (円安で輸入材が高騰)  (がんばる)     (儲かる)

 海外      ↗             ↗↗         ↗
   (現地コスト値上がり)   (がんばる)     (儲かる)


つまり、円安の逆風&海外労働者の逆襲、を飲み込んでおつり(利益)が来るくらい、国内でも海外でも売上をたてましょうぜ、という話。

いい感じでまとまった(?)。 さて自分も売上たてないと (= = ;)

長い飲み話にお付き合い頂き、ありがとうございました。

次はカンボジアの話します。

2014/01/22

話が違う大事な話(2)

日本がこれから良くなっていくはず、という夢のシナリオの大前提になっていたいくつかの大事な所について「あれ、何か話が違う」と感じた今年初頭の感想を、前回ブログで(ほろ酔い気分で)書いてみたら、(本酔いになって)途中で力尽きた。 

続き物にして期待を請うほどのオチは多分ないが(すみませんと先に謝っておきます)、続くと言っておいて続けないのも何なので、とりあえず続きを書いてみる。


前回ブログでは、日本のモノ作りが海外に流出し続ける状況(いわゆる「産業空洞化」)を、誰もが円高のせいにして何も対処しない(できない)まま長い時間が経った、という話までした。

かなり簡易に抽象化しているので、いろいろ語弊はあるかと思うが(ご容赦を。。)、以下の図式でまとめさせて頂いた。

(舞台:1ドル=80円の円高ワールド)
 場所    作る(費用)    売る(収益)     利益  
 国内   8千円     
       ↓ 海外生産
 海外   75ドル(6千円) → 100ドル(8千円) 25ドル(2千円)


・・そして時は流れ、また円に対してドルが高くなり、1ドルが80円から100円になった(つまり円安になった)。 ちなみに去年あたりの話である。

(舞台:1ドル=100円の円安ワールド)
 場所   作る(費用)    売る(収益)     利益   
 国内   8000
       ()           
        ↓
 海外   75ドル(7500円)→ 100ドル(1万円)  25ドル(2500)
      (②)                  (③)                            

上記の図式をここから先も何度か参照頂くため、国内費用8000円に①、海外費用75ドル(7500)に②、海外利益25ドル(2500円)に③、と番号を振ってみた。

今まで「円安になれば、輸出企業の業績がアップし、日本は復活する」と声高らかに語っていた識者達は、円ベース(25ドルじゃなくて2500円)の③だけに注目していた(円ベースの③しか見ようとしなかった)。

利益が同じ25ドルであっても、円/ドルが80円→100円になるだけで(円安になるだけで)、円で計算した利益が2000円→2500円に跳ね上がるのだから、「来たれ円安!」と識者が大合唱していたのも十分にうなづける。
 

ところで、上記図式による「産業空洞化」が続くのは大変よろしくない状況である、と多くの識者が語っていた。

何が「よろしくない」のだろう? 
一般には「日本のモノ作りの良さが失われる」とか「日本で雇用が生まれない」とか、そういう弊害が語られて来た。

そういえば、まだ十分に円高ワールドだったころ、歯に衣着せぬ物言いで有名な、インドで軽自動車をたくさん作っている自称「中小企業のオヤジ」が、

「もし円安になったとしても、いまさら日本に工場戻せませんよ。 海外で投資した工場で作って、海外で売ってるんですから。」

というような事を、けっこう大きな声でボソッと言い放っていた気がしたが、識者はみな聞こえぬフリをしていたように見えた。  

フランスから来て日本の大きな自動車会社を立て直した事になっている外人CEOも、まだ円高だった頃に、もっとはっきり同じような事を明言していたが、通訳を通してだったせいか、同じく大きく取り沙汰されなかった気がする。

そんな偉い人たち(すごい経営者達)がおっしゃる事の真意など、到底わからないけれども、僭越ながら上記の数字例を当てはめて見ると、もしや以下のような事を言っていたのではないか?

「75ドルで作ったモノを、100ドルで売って、利益が25ドル出たら、その25ドルは(円高だろうが円安だろうが)そのまま海外で次のモノ作りのための75ドルに充てますが何か?」

つまり、2000円になろうが2500円になろうが、そもそも25ドルを円に戻すつもりは(というか必要性は)もうない、と。

先ほどの図式で言うと、

 場所   作る(費用)    売る(収益)      利益   
 国内   8000
      (①)        
 海外   75ドル(7500円)→ 100ドル(1万円)  25ドル(2500円)
      (②)                   (③)

ではなく、

 場所   作る(費用)  売る(収益)  利益 
 国内    8000円          
       (①)
 海外    75ドル  →  100ドル   25ドル  ※( )の円表示が不要
       (②)           (③)

なのだ実は、と。
海外のドルはもう円に計算しなおさなくていいのだ。 だってそのままドルで使うんだから。


③の25ドルが、2000円から2500円に跳ね上がる事(円安になること)に夢と希望を託していた識者にとって、これは一大事だ。  
  産業空洞化と言われる状況が、日本にとって「何がよろしくないか」の答えは、実はおそらくこれではないか。

もはや海外の活動に関して言えば、作る費用(②)も稼ぐ利益(③)もドルのまま完結・循環してしまう。 もう円高も円安も関係ない。 

円安待望論者が期待を託していた、③が円ベースで跳ね上がる「円安効果」は、まさに言葉通り「消えてしまった」(というか「そもそもなかった」)。


悪い話は重なるもので、実際に円安が起こってみると、期待していた③の跳ね上がりがそもそも幻想だっただけでなく、皆が気付かぬフリをしていた円安効果の「都合の悪い方」が①に波及してくる。 

さらに海外では、いつまでも安かったはずの②の根底を揺るがす状況変化が起こっている。
・カンボジアがここでようやく登場・・。


もうオチが見えてきてしまったこの段階で恐縮ですが、もう一回だけ短めに続けてさせて頂きたく。。。 <(_ _;)>
明日早朝発、いつもの5時間陸路でバッタンバンからプノンペン戻りなのでそろそろ寝ます。