深夜便での日本出張当日だった昨日、とある日系の在カンボジア事業会社経営陣の方々からお招き頂き、かなり久しぶりにプノンペンの「北レス」で楽しい一時をご一緒させて頂いた。
「北レス」とは「北朝鮮が実質国営で運営する在外国レストラン」を筆者が勝手に略したもので(筆者造語)、カンボジアには首都プノンペンには3カ所、観光都市(というか街)シェムリアップにも2カ所ある(はずだ)。
北レスの特色は、一応北朝鮮系と言われる料理(筆者を含む素人には韓国料理との区分けは困難)よりも、そこに勤める踊り子たちのパフォーマンスにある。
北朝鮮本国から3年〜5年の任期で派遣された女性スタッフ達が、来客の給仕もしながら、同時にステージで「北仕込み」の歌や踊りを披露する。
さすがにあの世界的に有名なマスゲームを披露するほどのスペースも時間もないが、一点特化型の集中英才教育を売りとする彼の国から派遣されているメンバーだけあって、なるほどのクオリティを毎晩あますことなく発揮している。
北朝鮮の国民と直接出会う機会だけでも世界的に希有であり、しかも彼女達の多くは北朝鮮の首都平壌(ピョンヤン)で住むことを許される一部の特権階級のご令嬢で、平壌にある大学在学中の海外研修という扱いで赴任している選ばれし若いエリート達だ。
英語を基本にいくつかの言語もマスターしており、容姿的にもそれなりに選抜されてきた才色兼備な踊り子達。
偉大なる指導者様のもとに侍る「喜び組」として、噂ベースで世界に知られる厳選素材による幅広いホスピタリティ、までは望めないにしても、北朝鮮から来た才女達がかいがいしく給仕もしてくれて、歌や踊りも披露して楽しませてくれる。
彼女達の給仕・接客スタイルは、いかにもカタそうな彼の国から来たエリート才女よろしく、基本路線は極めてドライである。
レストランでの接客はもとより、プノンペン店舗2階の「秘密の部屋」にあるカラオケルームでも決して隣にすら座らない。
基本立ったままである。
基本路線のドライ軸は原則ブレないまま、たまに見せるはにかみ系のホスピタリティが、スキンシップ全開の東南アジア流に慣れすぎた在アジア外国人(主に日本人)のツボにピンポイントでヒットする、らしい。 いわゆる「ツンデレ」系の極地に不動の地位を築いている。
プノンペン店に限って言えば、1Fのレストランエリアでかいがいしくも一定の間合いをおいて接客してくれていた北朝鮮美女が、2Fの秘密の部屋では、横に座ってくれることはないにしても、すぐ隣に立ってデュエットしてくれたり、リクエストに応じて松田聖子の「赤いスイートピー」を歌ってくれたりする。
筆者が知る限りほぼ毎晩満員御礼。 カンボジアに在住・来訪する日本人にも意外とファンが多い、隠れた人気スポットである
プノンペンの北レス3カ所は、すべて北朝鮮系(国営)だが、上納先管轄官庁が異なる。 どれかが軍部の機関で、どれかは省庁のどこかであったり、だったと思うが、各北レス間のスタッフ交流はあまりない、らしい。
というか、レストランが開いているランチ・ディナー時以外も、基本的にレストランと同じビル内にある住み込み部屋かお稽古スタジオで過ごしているらしく、娑婆(しゃば)の空気に触れる機会は滅多にない、らしい。
たまに市場に買い出しに出たり、ケンタッキーでチキンを頬張ったりしている時に、顔を覚えてくれている常連客に出くわす事がある、らしい(筆者は未体験)。
日本だったらツイッターでリツイート拡散されるクラスの出来事である(はず)。
日本だったらツイッターでリツイート拡散されるクラスの出来事である(はず)。
首都プノンペンにある北レスと、観光都市(というか街)シェムリアップのそれは、はた目は同じお店に見えるが、そのビジネスモデルは極めて異なる。
毎年年間300万人以上の観光客を引き寄せる、「単品系」観光名所としては世界屈指の営業力を誇る世界遺産アンコールワットを擁する観光都市(というか街)シェムリアップは、北レスに限らず全てのサービス業が、基本「一見(いちげん)さん」をターゲットに事業モデルを組んでいる。
アンコールワットは、一度は見る価値はある偉大な世界文化遺産だが、よっぽどの遺跡好きか何か特定の理由でもないかぎり、短期リピートされる先ではないからだ。
よって、シェムリアップの北レスのメインターゲットは、一見客を大量に連れて来てくれるツアー会社である。
メジャーなツアー会社のツアープランにうまく組み込んでもらうために最適化されたサービス設計がほどこされ、芸の開始時間は18時、食事はそこそこに一定時間(約30分)のパフォーマンスを披露し、定時にお帰り願う。
(お客として行った場合)プノンペン店に比べて女性スタッフ達が”遠く”に感じるのは、スタッフの個性(ツンデレ度)の違いのせいではなく、単に彼女達から見て営業をかける相手として設定されていないからだ。
(お客として行った場合)プノンペン店に比べて女性スタッフ達が”遠く”に感じるのは、スタッフの個性(ツンデレ度)の違いのせいではなく、単に彼女達から見て営業をかける相手として設定されていないからだ。
競合相手は、カンボジア伝統舞踊「アプサラダンス」ステージが併設されたローカルビュッフェレストラン。
「せっかくカンボジアに来たんだから、カンボジア的な何かを見たい」という強い一般顧客ニーズに対抗するのは難儀だが、一方で「サクッと短時間で喜んでもらえて前後のプランにつなげやすい」というツアー会社のニーズをピンポイントにおさえることで差別化を図る。
かつ、何故かどの国に来ても同郷の何かを求めてやまない韓国人系のニーズも取り込みつつ、大量に流れる一見客マーケットで独特のポジショニングを維持している。
一方、観光資源の乏しさを課題視されて久しい首都プノンペンでは、シェムリアップ的な「一見客の大量フローの支流をおさえる」というスキームでは生き残れない。
観光客の大量フローがそもそもないからだ。
そこで、在住外国人のリピートを狙う独自のサービス体系が醸成されていく。
20時スタートの30分講演で、公演前は食事を楽しんでもらい、その後は2Fに誘う顧客導線も、他店に類を見ないツンデレ系接客も、生き残るために自然醸成された差別化戦略であり(たぶん)、これまた独自のポジショニングを構築するに至っている。
なにか元々は同じ科の生き物が、別の生態系で生き残りを図るうちに、似て非なる別の生き物になった進化の道筋を見ているようで面白い。
そもそも何故北レスがカンボジアにあるのか。
当然カンボジアだけではなく、ベトナム、モンゴル、ミャンマー、バングラデッシュ、さらには中東ドバイなど、その店舗網はとある共通項ある各国に広がり、各地で北の国から来た踊り子達が舞を舞っている。 彼の国の国家的グローバル事業といっても過言ではない北レス世界展開。
なにやら書き始めると止まらない、お伝えしたいネタの宝庫「北レス」。。。
想定外に長くなってしまったので、、まさかの続きはまた改めて。
注;
写真はすべて筆者が昨夜プノンペンの北レスにて撮影したものですが、原則的に営業中の撮影は禁止されているらしく、怒られたら謝ります <(_ _)>
また、文中の内容は基本全て、筆者が知る一部の事実に基づく想像及び推論(≒フィクション)です。
想定外に長くなってしまったので、、まさかの続きはまた改めて。
注;
写真はすべて筆者が昨夜プノンペンの北レスにて撮影したものですが、原則的に営業中の撮影は禁止されているらしく、怒られたら謝ります <(_ _)>
また、文中の内容は基本全て、筆者が知る一部の事実に基づく想像及び推論(≒フィクション)です。
0 件のコメント:
コメントを投稿