2014/04/16

たぶんズルズル引っ張る話

4月中旬がお正月なカンボジア。 多くの国民が心待ちにしている(数ある)長期連休の1つである。

なぜ4月なのか。 お釈迦様が生まれたのが4月あたりだから、とか、農業的にヒマな時期だから、とか、諸説あるが、年に3回お正月を祝う(1月1日、中国の春節、と今)カンボジア人にとって、本来自国の正月がこの期間だ。


おめでたいクメール正月最終日の本日、日経朝刊でいい感じの記事が出た。 

タイトルは『東南ア「関税ゼロ」財政に影 』。 日経お得意の「前途に暗雲が立ち込めてます」系の記事だ。


記事には、「東南アジア諸国連合(ASEAN)経済統合に暗雲をもたらす『財政の2018年問題』」、とある。 

結構ツボを付いた指摘をしている(私見)と思うが、さすが日経の命名力、「2018年問題」という言葉は筆者的には初見である。


ASEAN経済統合とは、ざっくりいうと、ASEAN 域内の、ヒト・モノ・カネの流れを自由化させましょう、という話。 
詳細説明はいろんな所で出ているので割愛。

ヒトでいうとVISA, モノでいうと関税、カネでいうと諸々投資規制、あたりを主に撤廃していけば、いろいろ便利になってASEANが活性化されますよ、という話。 総論で異を唱える人はまずいない。

が、この話、各論となるとかなりややこしい(はずだ)。 

外国人からおカネをなんとか搾り取りたい東南アジアにとって、域内のヒト(当面、東南アジア人だけ?)の行き来のVISA撤廃は無問題。 投資規制の緩和は(もっとおカネが入って来るから)むしろアリ。  問題はモノの方、つまり関税だ。

今回の日経記事の(筆者的には)ポイントは、前から「誰か表にしてくれないかな」と思っていた以下の図をカツンと作ってくれたこと。

日経記事より。 なんて関税頼りなカンボジア。。


基本方針として、ASEAN先行加盟国は2010年までに、後発加盟国は2018年までに(2015年だったはずがいつのまにか3年伸びていた)、まずは域内関税撤廃、とある。

ちなみに;
先行加盟6カ国:ブルネイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイ
後発加盟国4カ国:ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー


以前のブログで書いた通り、関税とVAT(付加価値税≒消費税)で国の歳入の6割をまかなっているカンボジアにとって、ASEAN域内とはいえ関税撤廃というのは容易ならない事態である。

海外との接点である港はまだいいが(域外からの輸入は活性化するだろう)、域内の陸路国境の伏魔殿の方々の食い扶持はどうなるのか。


彼の国々にとって、外資企業の法人税を下げる事は全く問題ない。 
そもそも徴税能力が大して備わってないし(日経記事にも「問題は税金の取り立て能力の低さ」とある)、ハナからあまりアテにしてないのだ。

カンボジアの税務署にいたっては、現状であっても既存外資へ税務調査での主なツッコミどころは法人税ではないし(詳細は割愛)。

「ヒト・モノ・カネの流れがより自由になり、法人税も安いですよ」という呼び込み文句で、数多くの外資系におカネを落としてもらいたい一方、カタい食い扶持はなんとか確保しなければならない。 
その最たるものの1つはモノ(関税)になる気がする。

各国、その他の財源確保にも余念がない。

同じく日経記事より。 大臣の豪邸は更に立派になろうとも、
国的に苦しい財政は続く。。

記事によると、ベトナム政府はアルコール類やたばこにかかる税率を引き上げる考えで、たばこは現行の65%から75%に、ビールやワインは50%から65%い、新たに炭酸飲料にも課税するとのこと。

ラオスは10年に10%の付加価値税(VAT)を導入したし、カンボジアも自動車などぜいたく品への特別税の引き上げを検討している、らしい。


ASEANは依然として「コンセンサスによる意思決定」や「内政不干渉原則」を堅持している。 

各論の施策は各国判断に委ねられているし、互いを尊重する形で遅延による罰則などは明確化されてない(する気は多分ない)。


「大きく成長する6億人市場」をアピールして「先行投資誘致」につなげつつ、とりあえず来させておいて(逃げられないようにしておいて)、各論(具体的な税制とか)の調整はズルズルと引っ張る・・・という、新興国お得意の戦法がくっきりと浮き彫りになっている、すでに。

先行6カ国(インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、ブルネイ、フィリピン)が昨年末時点で対象品目の99%の関税を撤廃している、というのは実はホントにすごい話だ。 が、後発4カ国はきっとそうはいかない気がする(私見)。 

でもこの先行優等生組の実績が、呼び込み文句に1つ説得力を与えてしまっている。

むしろそれを狙った布石としての実績作りなんじゃないか、、という邪推も可能だが、もしそうだとしたら、そこまで長期的視野で徒党を組んでる彼等には到底太刀打ちできないな、、たぶん。 


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