2014/03/15

国境物流:カンボジア稼ぎ頭の必殺技

他の新興国事例のご多分に漏れず、お役所にはいろいろと手を焼かされるカンボジア事業。

その最たるものと言っても過言ではない”カンボジアの伏魔殿”こそ、
「カンボジア関税・消費税総局(General Department of Customs and Excise, GDCE)」である(当社比)。

所得税や法人税(いわゆる直接税)を徴収する機能が全く備わっていない(と言っても過言ではない)カンボジアにおいて、国の稼ぎ(歳入)の堂々約6割を占める間接税。 

この間接税の内訳の大部分を、関税と消費税(付加価値税、Value Added Tax)が占めている。 その関税とVATの徴収をその双肩に担う、まさに国を支える「稼ぎ頭」だ。 

カンボジア地方での農業事業を営む弊社にとって、コメやオクラなどの生産物を輸出するにしろ、農機や資材を輸入するにしろ、常に避けては通れない面倒な難敵 いつもお世話になっているお役所の皆様である。

農業事業の拠点がタイに近い関係で、取引先もタイに多く、タイとカンボジアの陸路国境でよくお世話になる。 
苦節X年、GDCE皆様にいろいろと手を焼かされて来た ご指導ご鞭撻を頂いてきたおかげ様で、ようやく諸々スムーズに通関処理をこなせるようになってきた。 

普段はシャイであまり表にお出ましにならないGDCEの皆様。 普段すっかりお世話になっている御礼も兼ねて、勤務に励まれている風景を支障ない範囲内で少しご紹介したい。

パイリン特別市に近いタイとの国境地帯”プラム”。
カンボジアとタイとの陸路国境はいくつかあり、ここはどちらかというとマイナーな穴場スポット。 

陸路国境エリアではお約束のカジノ。 右手前の小さい建物はカジノスタッフ宿舎、、
ではなく国境警察と入国管理局。 カジノと役所がなぜか建物の色調を合わせたり。

伏魔殿プラム支店 プラムの関税消費税総局(GDCE)。 
戦いは会議室の中で起こっている。
          
GDCEプラム支店オフィスでは、数名のお役人皆様が、カジュアル気ままな服装で勤務に励んでおられる。 カジュアルすぎて、誰が作業スタッフで誰が偉い人なのか、一筋縄では分からない。

GDCEプラム支店の内部。 勤務中の服装は意外やカジュアル。

ヒマそうにスマホ眺めている右側女性。 やる事ない事務スタッフ、かと思いきや
実は実権握ってる要ケア人物。やる事ないという点は合ってる模様。

首都プノンペンですらまだまだシステム化が進まない現状において、辺境のプラム支店とあっては当然、全て手書きである。

何を記入しているのかはさっぱり定かではないが、全ての書類に何かクメール語で熱心に手書きして頂いている。 
腱鞘炎が心配されるくらいの文章量だが、イライラに歯ぎしりしながら ご尽力に感謝しながら見つめるのみの弊社メンバーである。
全ての書類に手書きで何やら記入。 効率化させるつもりを毛頭感じさせない。

以下、「彼等」 が誰かは特に言及しない、筆者の独り言である;


数あるお役所の中で「彼等」にだけ与えられた特別強烈な必殺技は
「何もしない事」だ。

例えば税務署などは、納税を怠ってそうな法人を自ら選定・アプローチし(カンボジアでは個人には来ない)、難癖をつける 指導を行なう事で小遣い稼ぎをする 徴税を実施する。
つまり、税務署は自分で”攻めに”行かなければ稼げない。

一方「彼等」は、モノを動かしたい個人・法人に対し、何もしてあげない事で強烈なダメージを与える事ができる。
攻めるでも守るでもなく、何もしない放置プレイが必殺技。 国の稼ぎ頭になれるわけだ。

当然、ライセンス許認可の権限を持つ省庁等も、同様なワザは持っている(実際に駆使しているケースもある)。
が、東南アジアに進出する企業であれば、許認可には時間がかかる事くらい、ある程度事前に想定しており、計画的な持久戦に持ち込む事も不可能ではない。

一方、物流の場合、モノはもう国境まで来ているわけで、モノによっては時間の経過で劣化するものもあり、納期の問題もあり、「国境でストップ」という状況が与えるダメージは計り知れない。

しかも国境保管の一定フリー期間(一週間程度)が過ぎると日数ベースでペナルティが発生するというボディブロー付き。 一見地味だがかなり強烈だ。

体感してみると分かるが、高利貸しのトイチやトサンを彷彿とさせる勢いで日々蓄積していくダメージ(増額していくペナルティ)。 

しかも更に一定期間がすぎるとペナルティ金額(率)が一気に跳ね上がり、しかもそれが全く通知されず、身代金 請求額を聞いた段階で初めて知らされて腰を抜かす。
払わないと当然、身柄を引き渡してもらえない 保管倉庫から出してもらえない。 パケ死ならぬペナ死である。

この”はじめの一歩”並みのボディーブロー連打で、あえなくノックアウト(カンボジア撤退)した日系企業も実在する。


どこかの国の国会で以前よく見かけた「牛歩戦術」に似ているが、さすがにそこは先進国だけあって「牛歩」程度の進捗は見せる。

が、「彼等」はそう甘くはない。  何もしない事など造作もないのだ。
ふと事務所からフラリと外に出て、いつ帰ってくるか分からず、電話も通じない、という状況を作り出せば良いだけである。 

モノを動かしたい個人・法人がいなければ一気にメシの種に詰まるはずの「彼等」だが、2015年のASEAN経済統合に向け、ますますヒト・モノ・カネの流れが自由になる潮流の中、南部経済回廊の要衝となる(はずの)カンボジア。 
放置プレイで苦しめる お世話をする相手には当面事欠かなそうである。

弊社の”ブツ”は半日で通関終了。 国境警察官が物珍しそうに写真を撮っていた。

弊社は幸運な事に、放置プレイをされる事もなく、正規な形で普通にモノを出し入れさせて頂いている。 

日々「彼等」皆様に感謝です。  
あ、同じくスムーズな処理でいつもお世話になっている、首都と港(海の方)の「彼等」皆様にもMy Best Regards。



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