2014/03/19

恐るべしカンボジア人の「値付け」感

カンボジア第2の都市と言われる地方都市(というか町)バッタンバン。

第2位とはいえ、第1位の首都プノンペンには何十馬身も引き離されており、距離が縮む気配を感じさせた事は歴史的にも所感的にも一度もない。
「1位以外はビリと一緒」という某カリスマ経営者の言をリアルに体現している片田舎町だ。
仕事を終えた後、夕食を食べて、そのあと特にすることがない。(ない事もないが、ほぼない)

そんなバッタンバン市内に比較的最近できて、個人的にお気に入りな、
完全に「地元カンボジア人向け」のスパがある。 
(※ 以下、「地元カンボジア人」を書きやすさの便宜上「ローカル」と表記しますが、特に他意はありません)

なんで「完全にローカル向け」と思うのか、と言えば、例えばシャワールームに備え付けてある以下;
どちらかがシャンプーで、どちらかがボディソープである確率が極めて高いが、
クメール語(カンボジア語)が読めない身にはさっぱり解読不能。

「Shampoo」と「Body Soap」の英語ラベルくらい張っても良かったんじゃないか、と首を傾げたくなるが、、ソフト面でここまで「ガイジン度外視」の姿勢を取られると、やはり「ローカルのローカルによるローカルのための」スパなんだと思わざるを得ない。

もう1つ、「ローカルのローカルによるローカルのための感」を痛烈に
醸し出すのは、ソフト設計の極みとも言うべき「値付け」の部分である。


例えばちょっと良さげな新しいホテルがバッタンバンに出来たとする。

そのうち泊まってみようかな、と思いながら中をのぞいて値段を聞くと、たいがいが近くのゲストハウスや古いホテルと大して差がない部屋代を提示してくる。

ちなみにバッタンバン出張時に筆者が常用しているホテルは、WiFi完備(YouTubeがカクカクせず見られるくらいの強さ)・空調完備・部屋も清潔・お湯もOK(ちょっと弱いが)、で素泊まり一泊14ドル(約1400円)。

一方、近くの古いゲストハウスだと、エアコン付きの部屋は素泊まり一泊12ドル(1200円)だ。 その差たったの2ドル(約200円)。
・ちなみにエアコンなしでいいなら一泊7ドル(約700円)だ。

我が常宿は決して新しくはないが、仮に部屋が毎日フル稼働していたとしても、一泊14ドルで果たして元が取れるのか。。。と他人事ながら心配になる。

だが、この「元が取れるのか」という発想が、どうやらローカル意識の
初期設定にインストールされていない、ようである(筆者私見)。


中途半端にビジネス算数をかじってしまった身としては、たとえば5億円でホテルを建てたとして(カンボジアであれば結構立派なのが建つはずだ)、

「建物が50年もつとして、5億円÷50年=1千万円は毎年回収していかないとな 」(いわゆる耐用年数を50年とした減価償却)。

「銀行から借りてたとしたら、元利の返済原資は毎年回収していかないとな。」

とか、みみっちくも当たり前の収支計算をしてしまう。

その回収分を部屋代に乗せるので、当然ゴツいホテルを建てれば部屋代はそれなりに高くなるはず、なのだが、ローカルの発想はどうやらチョット(いや、かなり)違う。


外国人が余計な関与・アドバイスをしていない場合(≒ ローカルだけで建てた場合)、どうも彼等は「建物を建てたコスト(資産計上額)の回収」をあまり想定していない、気がする。

「いいホテルを建てたら、価値は減らないし、将来きっと高く(外国人に)売れるし、しかも銀行から借りてないし、あぶく銭で造ってるし、将来子供達に残す資産ですが何か?」(某ローカルの言、筆者意訳)。
・たしか相続税も贈与税もカンボジアにはないはずだ。
 (間違ってたらすみません)

人件費や水道光熱費などの諸経費はカバーしなければならない、とは思っている。
だから、古いホテルやゲストハウスとの違いは、スタッフ数や部屋数の規模(による経費の違い)だけだ。 
光熱費は設備によって結構変わるが、スタッフ人件費はホテルの品質とは無関係にほぼ横並びである(地方だと特に)。 基本的な所にかかる経費は新しいホテルも古いホテルも大差ないのだ。

しかもターゲットは、豪華ホテル(非日常空間)を楽しむ事に意義を見出すほどの文化成熟度にいたるにはまだ時間がちょっとかかるローカルだ(当然、例外もいるが)。 夜寝るだけの部屋に高値を払うのはナゼ?、という初期的疑問から抜け出せずにいる。

結果として、ゲストハウスとガチンコ競合するような値付けの提示となる。

言い換えれば、「ローカルのローカルによるローカルのための」ハコモノ施設を経営するローカルの念頭には、EBITDAの概念しかない(筆者私見)。 
 ※ EBITDA : ここまで長々と話した内容を一言で表せる便利な会計用語
  (詳細気になるレアな方は、リンク参照してください。。)

それが、ハコモノの空間品質レベルによって払う対価が異なる事をまだ理解しないターゲット(ローカル)の値頃感とバッチリかみ合って、常軌を逸した値付けがまかり通っている。

経常利益を意識せざるを得ない普通の外国人が勝負しても、勝てる見込みは薄そうだ。


日本でお世話になった前職会社の創業者いわく、
「差別化戦略ってのは、平たくいえば『真似できない』『真似したくない』『真似したら損する』のどれかを相手に思い込ませる事だ」
との事だが、、、、(たぶん)意図せずそれを体現しているローカル。

まあ、どこかの先進国の民も、20年ちょっと前までは「土地はぜったい価値が上がり続ける」と盲信して、国民みんなで年収の数倍のレバレッジをかけて土地&住居に資産をぶち込んで、アジアのキセキを言われる経済成長を達成したわけだから、、、あながち「ローカルってやっぱおバ●なんじゃないの?」と吐き捨てられる話でもない。 

むしろ、歴史が繰り返すとすれば、カンボジアが今そういうフェーズなんだ、、という事だろうか(筆者にはとてもじゃないが乗れない仮説)。

というわけで、まあハコモノ系でローカルと勝負される勇気ある外国人の方々にとって、上述のような無邪気なローカルが実在している事を念頭に置いておかれることは、たぶん無駄にはならない。。。と思います。


シャンプーとボディソープがどっちかわからない、、というネタから、
またあらぬクドい方向に話が進んでしまい、反省のかけらも見えないこのブログ。

今回、ここまでお付き合い頂いた方々に感謝を込めて、バッタンバンの
穴場情報を以下;

筆者お気に入りのローカル向けスパ in バッタンバン、客がいたら写真撮れないが、客がいないスキを見て内部撮影に成功。 おそらく本邦初公開。

40℃チョットのほど良い温度に調整されている大浴場。
カンボジアで手足のばしてゆっくり浸かれる風呂は貴重。

奥のドアは、左がサウナ・中央がスチーム(右はお手洗い)。
 サウナは香りがする木片を焼べてたりして、リラックス効果満点。
手前の風呂はサウナ用水風呂。
停電した時ジェネレータ発電に切り替わるスピードはカンボジア最速(筆者所感)、まさに電光石火。

この浴場を好きなだけ楽しんで、冷たい水やお茶も実質飲み放題で、しめてたったの3ドル(約300円)。
・フリードリンクはホントは1杯だけらしいが、従業員が
 誰も理解しておらず、頼んだだけ持って来てくれる。

浴場 + マッサージ(正統派マッサージ、約1時間)をつけたセットメニューは、ボディ・マッサージで5ドル(約500円)、フット・マッサージで6ドル(約600円)。

これぞローカルの値付け感、と肌で感じられる、脅威的なコスパのスパである。

普段たいして客は入ってないが、小リッチ風のカンボジア人♂が数名、こうるさく談笑しながら慣れない感じで施設利用している。

妙に低く温度設定したサウナに短時間入り、その後妙に長く水風呂につかる、、という、ローカルの体感温度の不思議さをシュールに観察する事もできる。
・サウナの温度を下げるのは停電ではなく彼等である。


ちなみに、あまりのお得感でローカルに知れ渡り始めたのか、大挙してやってきた弊社バッタンバン事務所のトラクター野郎軍団(従業員達)とバッタリ裸(レンタル水着は着用)で鉢合わせしてしまい、かなり気まずい感じ(軍団の方が)が醸成された先日。

彼等の月給から生活水準まで、一応社長なのでよく知っているつもりだが、そのローカル一般所得層な彼等がプライベートで押し寄せるんだから、ここは近々、ローカル庶民の遊園地になってしまう確率が極めて高い。

リラックス空間としての耐用年数はかなり短めになりそうだが、ローカルな値付けはたぶん変わらないので、静かなうちに十分楽しんでおかないと。

・・そもそもバッタンバン自体が、穴場を通り越して僻地すぎて、あまりお役立ち情報になってなかったら恐縮です。。。 
バッタンバンにお越しのレアな方、ぜひ一度お試しを。



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