2015/12/31

2015年大晦日、といえばアセアン経済共同体発足

2015年も本日が最終日、いわゆる大晦日である。

3年ぶりに日本で年を越す事になる今回だが、久しぶりに感じるこの時期の日本はまさに正月モード。 昨日30日はスーツ姿で外回りする筆者が閑散とした街中で妙に浮いている感じがしたし(自意識過剰だっただけかもw)、さすがに31日本日はアポが入らない。

一方、普通の平日であるカンボジア現場からは元気なLINEメッセージや業務メールがガンガン送られてくる(これは当然あるべき姿である)。  やはり2国間を行き来しながら進める事業では、連休じゃない方の国に滞在する方が仕事的な精神衛生上では好ましい状態である事は間違いない。 

カンボジアと日本、世界各国との比較的で見るとどちらも祝日が多い方の国に属するが(特にカンボジアは27日ほどあり、世界No.1との呼び声も高い)、不思議と連休が重なる事が少ない。  
カンボジアでクメール正月やら王様誕生祭やらと大型連休が続く4・5月は日本的には新年度スタートを切るの時だったり(日本のGWはちょうどそのカンボジア2大連休の狭間にある)、日本が夏休み・お盆休みモードになる7・8月にはカンボジアに祝日が1日もなかったり、といった具合。

よって、両国各々の連休から逃げるように約4,000Kmの反復横跳びを繰り返す生活が、気付けばもう8年目を向かえているが、今年は久しぶりに日本の正月休みモードを満喫させて頂く事になる。 ただしカンボジア現場とのやりとりでスマホやPCとにらめっこしながらだけどw

さて本日2015年12月31日は、アセアン的な視座からすると結構重要な転換期(というか起点)となる大事な日である。 本日付けで、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国による広域経済連携の枠組み「ASEAN経済共同体(ASEAN Economic Community、以下AEC)」が発足する。 本年最後の締めとなる本稿はちょっとカタめなこの話。

このAECという単語の日本での認知がどれくらい普及しているのか(筆者的には)定かではない。「アセアン」と聞けば東南アジアに縁が無い人でも「なんか聞いた事ある、タイとかベトナムとかでしょ?」的な反応が多いように思うが、「エーイーシー」と聞いても「???」という感じ、、が多数派ではないだろうか(筆者私見)?


AECとは何か、をざっくりと言うと、ASEAN10カ国の域内において、「ヒト・モノ・カネ」の流れを自由化・円滑化する事で、ASEAN域内全体を擬似的な一つの市場・一つの生産基地として機能させよう取組み・・・を実現するための施策や制度、取り決めの総称だ。


ASEAN10カ国域内とはこの諸国全域(日経新聞朝刊より)

加盟国に対して法的強制力を持つ(かつ通貨も統合されている)欧州連合(EU)とは根本的に異なる構想で、総論的には自由な貿易圏をお互い協力して作りましょう、という(EUに比べて)緩めの概念であり、各論となる具体的な施策・制度・取り決めは自主性を持った各国間で調整しましょう、という話。  各国が何かに強制的に従わなければならない類の話ではない。

流れの自由化・円滑化とは、具体的にいうと「ヒト」に関してはビザ発行の緩和・撤廃や、職業資格の相互承認(A国の看護師さんがB国でも働けます、的な)、「モノ」に関しては関税の撤廃や通関手続きの緩和、「カネ」については送金や投資ルールの緩和・コスト低減、など。 
これらの具体的なルール作り・国家間取り決めを個々に実現していったら、最終的にはAECが完成する(実質的に経済統合している)、というストーリーである。

ありがちな「総論賛成、各論反対」のスタック状態にすぐさま陥りそうなこの物語が、それなりに実現しそうな説得力を持って語られているのは、「モノ」についてのお話が既に先行してそれなりに実現しているからだ。

ASEAN先行加盟国の間ではすでに品目数にして96%が関税撤廃されていて、我らがカンボジアを始めベトナム・ラオス・ミャンマーの後発加盟4カ国を加えた全域でも関税撤廃率98%超えが現実的に見えて来ている。


ASEAN域内の経済回廊も現実に整備が進んでいる(日経新聞朝刊より)

一方、「ヒト」や「カネ」については、各論反対までとは言わなくとも「各論未賛成」のままズルズル行きそうな気配も濃厚である。

「モノ」の流れの自由化実現をにらみ、すでに国家間をまたにかけた事業資源分散の動きが始まっている。 
タイのサイアム・セメント・グループは年明け1月からカンボジアのカンポット州に建設した工場で年間100万トンの製造ラインを稼働させる。
三菱マテリアルはすでにエアコン温度センサーの工場をラオス首都ビエンチャンで稼働、中核部品はタイから輸入している。

「モノ」の自由な流れは実現しそうな状況をにらみ、生産拠点(人件費の安い国)への建設・生産(にまつわる雇用)シフトが現実に起こってる中で、各国が自国産業や雇用を守りたい思惑も分かりやすく見え隠れする。

どこで損してどこで得をとるか、意外と分かりやすいASEAN国家間交渉・攻防が年明け以降の経済・政治紙面を賑わしてくれる事を期待したい。
(まあ、実際のところはアメリカやら欧州やら中国やらISやらのネタに比べれば地味過ぎる事は確実だろうけどw)


AECが実現すれば、域内人口はEU(18カ国)の5億820万人を大きく上回る6億2000万人、域内総生産はさすがに18兆ドルもあるEUには遠く及ばないが2.5兆ドル(約300兆円)という巨大な経済圏が構成される事になる。


ASEAN10カ国を足し上げるとこれくらいの規模に(日経新聞朝刊より)


カンボジアを拠点に(つまりASEAN域内で)事業をする身としては、当然意識すべき経済の大波(の胎動)である。  
まあ、まだ始まってない話(今日発足w)なので、実際に起こるドタバタはこれからのお楽しみとなるが、新たな枠組みや制度が始まってそれがしっかり整備・運用されるに至るまでのタイムラグの狭間こそが機動力あるベンチャー企業の稼ぎ時。   ASEAN経済が大きく動き始める(はずの)2016年の幕開けに期待したい。


・・・・今年最後のアップとなる本稿。 今年も結局、軽め・短めなトピックはほぼ皆無で、むしろ更に長く(文章も未投稿期間もw)クドくなってしまった。
グルメネタもFB投稿ばかりで本稿では皆無。 昨年末も似たような反省をして今年全く改善しない(むしろ悪化)する結果となったので説得力が一切無い事は重々承知しておりますが、来年はより軽め・短めにトライしていく所存です。

本年もお付き合い頂きありがとうございました。 来年も引き続きよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えくださいませ <(_ _)>

2015/12/22

地中海の美しい島とロシアマネーとカンボジア

2015年も残すところもう10日を切った。 本当にあっという間に過ぎ去った感ある本年、筆者としては事業的にも個人的にもいろんな意味で濃厚な一年であった。 関係者皆様、本当にいろいろとお世話になりました。来年もひとつまた、よろしくお願いいたします。

さてこの時期、カンボジア的には日本のような正月モードにはならないとか、クリスマスには本気出すモードになるとか、その辺りの時候の挨拶的なカンボジアネタは前回サラッと書いたので、今回はちょっと飛び地の不思議なお話を。



プノンペン唯一の政府公認カジノ&ホテルである「ナガワールド」を運営する「ナガコープ」が、地中海の小さな島国「キプロス」で開発されるカジノリゾートの運営権の入札に参加する、と報道された。


「ナガコープ(Naga Corp Ltd.)」は2003年に香港に設立された「ナガワールド」運営会社で、カンボジア政府から首都プノンペンおよびその周辺地域におけるカジノ独占営業権(1995年から70年間)を取得していると言われており、2006年10月には香港証券取引所に上場している(いわゆる外国人も投資できる中国株の一銘柄)。 


現在プノンペン中心地にそびえる「ナガワールド」に続いて、その隣接地に「ナガ Ⅱ」(?)なるカジノホテル&商業施設(?)も絶賛建築中であり、かつまた既に絶賛営業中の「ナガワールド」も増築工事がなかなか完了しないまま(いつも敷地内にクレーンが設置されている)、建物の入り口の位置や内部の施設配置が常に目まぐるしく変化を続けている。


ミッキーマウスの生みの親で知られるウォルト・ディズニー氏が「ディズニーランドは永遠に完成しない」と述べたのは世界的に有名な話だが、まさかそのあたりを意識してずっと完成させないつもりなんではないか、、と勘ぐってしまえるほど、永遠に増築工事を続けられる体力がありそうな、何にせよ絶好調な香港上場企業である。


で、そのカンボジアの絶好調カジノホテルの運営会社が、距離にして5,000Km近く離れた地中海の小さな島国のカジノリゾート開発にわざわざ手を出す(カンボジアの開発もまだ完成してないのに、、永遠に完成しないのかもしれないがw)、という不思議な報道。




キプロスはアナトリア半島(トルコ共和国のアジア側)の南、地中海の東端に浮かぶ風光明媚な島国で、イギリス連邦加盟国でもありEUにも加盟しているれっきとした共和国である(正式名はキプロス共和国)。


古くからエジプトとメソポタミアをつなぐ海上交通の要衝にあり、古代オリエント諸国、エジプト王朝、ローマ帝国、ヴェネツィア共和国、と歴代の大国から支配を受けて来た。 その古い歴史の時代からギリシャ系住民が数多く住んでいた(今でも公用語はギリシャ語だ)が、16世紀にオスマントルコに征服されるやトルコ系住民が大量に移住し、以来ギリシャ系住民とトルコ系住民が対立する構図が続いている。


現在、ギリシア系はキプロス共和国(南キプロス)、トルコ系はキプロス連邦トルコ人共和国(北キプロス)に分かれており、北キプロスは国連加盟国の承認をほぼ受けていない(トルコのみ承認)ため、一般にキプロスというと南のキプロス共和国(ギリシャ系の方)を指す。


もともと漁業と観光しか産業のない小さな島国であったのに加え、この民族間対立・紛争も重なり、国家としては極めて貧しい状況が続いたキプロスだったが、その打開策として見出した戦略が金融立国への道、つまりタックスヘイブン化であった。


イギリス統治下であったため英語が普及していた事など、そもそも金融立国化に適した素養を有する国ではあったが、このキプロスの存在感が一気に大きくなったのは巨額のロシア・マネーの大きな受け皿となってからだ。


もともとロシアとギリシアには宗教的・文化的つながりが深く、またロシア人の地中海への憧憬もあって(だからカンボジアにいるロシア人もシアヌークビルが大好きだ)、キプロスはロシア富裕層に人気の高い観光リゾートとなっていた。


ソ連が崩壊し自由化した後のロシアでは政治的混乱が続き、自由化のどさくさで財をなしたロシア富豪達は、その富を守るためにやっきになって海外に財を移転しようとした。そのタイミングとキプロスが金融立国に向け舵を切ったタイミングがうまい具合に合致した。


こうしてキプロスは金融事業を軸に90年代に急速な成長を遂げ、キプロスの1人あたりGDP3万ドルに達し、欧米の先進国と肩を並べるまでになった。


・・・・とまあ、「キプロス」の説明がえらく長くなってしまったが(多くの日本人にとってはかなり馴染みの薄い国だしw)、この「キプロス」が結構話題になったのは2012年に起きたギリシャ危機の時である。(今年起こったものではなく、その前)。



当時ギリシャが財政破綻に陥り、EU主導でギリシャ国債を保有する金融機関などは最大50%もの債権放棄を強いられた。 その問題となったギリシャ国債を「キプロス」はかなり大量に購入していた。



「キプロス」にはその素性や出所を(ほぼ)問わない諸々のロシアマネーが大量に流入し、現地金融機関にはそれを運用する責務があった。 そこで自分たちをギリシャ人だと思っている「キプロス(南キプロス)」の金融マンが当然のように「安全かつ高金利」と思って買い続けたのがギリシャ国債だ。



そのギリシャ国債がほぼデフォルトに近い状況となったとき、「キプロス」が取った選択は、は、10万ユーロ(約1200万円)までの少額預金を全額保護し、それを超える大口預金をペイオフ(保護対象外)とする事だった。要は大口預金者の預金額を没収する(債権放棄の原資に充てる)と宣言したに近い。 

このような暴挙(?)がまかり通ってしまった(議会を通ってしまった)のは、大半の「キプロス」国民自身は少額預金者の枠を出ず、大口預金者はほぼ全てロシアマネー(後ろめたくて反論できないお金)だったからだろう。




・・・ますます長くなってしまったが、この話がなんで筆者にひっかかったかというと、ちょうど当時、カンボジア携帯通信会社の合従連衡が盛んになりはじめた時期で、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのSmartが、当時あったHelloを買収した際、そのマネーが「キプロス」を経由していた事が判明したからだ。

2013年初頭、Helloブランドを展開していたマレーシア系携帯電話会社ハロー・アクスタシア(Hello Axiata Co. )は、同じくSmartブランドを展開していたラテルス(Latelz Company Ltd)を買収し、HelloSmartに統合。 買収額は総額で15500万ドル(当時レートで約130億円)と伝えられた。

マレーシア携帯最大手がカンボジアのSmartブランドを丸ごと買い取った形になったが、このマレーシア大手相手にSmartを売り抜けたラテルスという会社は、「キプロス」に本店を持つロシア系企業であった。オーナーはTimeturns Holdingsというロシア系持ち株会社。

つまりロシアマネーが「キプロス」を通じてカンボジアに来ていたわけで、そのマレーシア大手が支払った15500万ドルも、おそらくは「キプロス」に送金されていたはずだ。

でその頃、「キプロス」は10万ユーロ超の預金は保護対象外としていた。 果たしてその15500万ドルは「キプロス」に送金しちゃって本当に大丈夫なんだろうか。。。

・・・と、筆者が全く人ごとながら心配した記憶が残ってます当時、、というお話w


しかもそのギリシャ危機があった2012年の6月、筆者はなんと偶然ギリシャに行っていた。 で、当時買ったギリシャの「地球の歩き方」に「キプロス」もオマケのように載っていた(旅行的にはやはりギリシャに近い国なんだろう。行かなかったけど)。 
なので、「キプロス」という名前が何となく頭に残っていた、、という縁もあって、そのSmartHello統合話に出て来た「キプロス」にちょっと興味を引かれて、いろいろ調べた、、という当時の経緯。


そんな「キプロス」の名前が最近また出て来た我らがカンボジア。
3年前は携帯会社の買収で、今回はカジノリゾートの入札。 いよいよ愉快な空想・妄想が膨らんでくる。


・・昔は静かな港町だった、ロシア人が大好きなカンボジア南西部シアヌークビル。 今や欧州系の旅行の達人達が集う穴場ビーチリゾートとして絶賛開発中である。

昨今急激な開発とともに、街中で車が爆発したり怖い集団の大物ロシア人が国外退去させられたり(噂)、、などと、ハリウッド映画並みの抗争劇が現実に市内で繰り広げられたりして、ロシア人にとってどうも商売しづらい場所になってきた。

そこで彼らが目をつけた、こちらもロシア人が大好き地中海アイランド「キプロス」のカジノ開発話。 カンボジアの「ナガワールド」が「キプロス」でもカジノを運営する事になって、両国が兄弟カジノで結ばれれば、何やらステキな事がたくさん起こりそうだ。

例えば仮にロシアから「キプロス」に持って来たルーブル(ロシア通貨)やらユーロやらを、カジノで増やして(増やせなくてもカジノ・コイン化して)、 VIPのコイン残高をデータ管理にしてそのコインをカンボジアの兄弟カジノ「ナガワールド」でも使えるようにしたら・・・絶賛米ドル経済なカンボジアで引き出したコインを自由に米ドルに交換できるじゃないか。

これって2つの主権国家が正規ライセンスを与えた香港上場会社が正規に運営する両国カジノを通じた地◯銀行、、、いや、無駄でも今時のIT技術をかませて枕詞に「フィンテック」と銘打てば当面は錦の御旗となってアングラ扱いされなそうだし、香港上場している「ナガコープ」も「フィンテック銘柄」になって株価急騰、「キプロス」のカジノもどこかに上場させちゃうのも夢じゃない ♪

今は中◯人 (とホントは来ちゃいけないのに何故かいる小リッチ系カンボジア人※)が我が物顔で占拠する「ナガワールド」も、そのうちロシア人に浸食され始めたりして、、2階のカラオケにいる女性も今は中国人とカンボジア人だけだけど、そのうちロシア美女が。。 そういえば最近プノンペンで出張者を連れて行く定番となりつつあるらしい「R◯CK」にはもうロシア美女のダンスショーがあるって聞いたなそういえば。。。すでに浸食が始まっているのかもしかして・・♪


・・・・以上(シアヌークビルが云々からのくだり)は何の根拠もない筆者の空想・妄想ですww
(※:カンボジアのカジノはあくまで外国人専用で、カンボジア人が自国カジノを利用する事は禁止されている。)




最近、アメリカ財務省が、日本とカンボジアでマネーロンダリングに関わっていたとされる日本人の米国内資産凍結と金融取引の禁止(おそらく米ドル預金凍結)措置をとった、という報道もあった。
見えない所で意外とスリリングな巨額ブラックマネーの応酬が行われている・・のかもしれない我らが小国カンボジア。



まあ、さて現実に舞い戻った一零細民間企業の弊社社長としては、そんな空想をネタをつまみにたまに妄想広げる夜を楽しみつつ、目下日中は極少マネーを真っ当に稼ぐために日々奮闘する毎日です。 さて年内もうひと頑張り!

・・・長いな今回も、、しかし二回に分けるほどの話でもないし、明日には忘れてるかもしれないし。。やむなしw

2015/12/13

最近流行のイノベーションとカンボジア:フィンテックと民泊とUbarとカンボジアの・・・

気がついたらあっと言う間にすっかり今年も年の瀬。 
日本ではそろそろ年内手仕舞い&正月突入モードになっているかと思うが、カンボジアは(というか弊社は)おそらくそうでもない。

カンボジアは暦年の正月、中華系の旧暦正月(来年は2月初旬)、カンボジアの正月(毎年4月中旬)と、正月が年に3回も訪れるとてもおめでたい国ではあるけれど、暦年の正月は1月1日が祝日になるくらいで、その他2つの正月に比べてそれほど盛大に祝う(というか休む)期間となっていない。 むしろその手前のクリスマスに本気モードになるのが例年の通例である(有り難いことに祝日化はしていないけど)。


ハロウィーン、クリスマス、正月、バレンタイン、など諸々、各々の歴史的起源やら宗教的背景やらには頓着せず無節操に全て飲み込んで祝ってしまうあたり(なぜか感謝祭はその対象に入っていないあたりも)、日本とカンボジアに何か根底で通じているものがあるのではないか、、などと日本&カンボジア両方好きな面々が抱きがちな”つなぎたい妄想”が、祝日の長期休みが来るたびにふと頭をよぎったりするが、何にせよカンボジアは現在、特に正月気分という感じではないことは間違いない。


かつ、ガチクメール現地企業である弊社としては、当然ながら来年2月8日を春節(旧暦の元日)とする中華系旧暦正月は絶賛通常営業予定であり、世の中の趨勢はさておきお休みにはしない。 

家族が中華系の流れをくむ社員達は当然、法令に定める有給休暇を取る権利はあるので、それを有効活用してもらう事になる。  
ちなみに、むしろ有休を消化せず余っている社員が多い事が最近の小トピック@弊社になっていて、年内12月のムチャな有休消化(12連休とかw)を防止しなきゃ、、という流れから、いよいよ来年から社員旅行が導入されそうだったりするが、何にせよ来年からは年間まんべんなく計画的な有休消化を促す事になっているw

ということで、11月の水祭り大型連休のあと、来年4月(のカンボジア正月)まで長期連休がない12月〜3月はカンボジア事業として走り時なので(かつ弊社事業的には繁忙期だし)、正月モード一切なしで突っ走る所存であります。 
あ、ちなみに些事ながらこの年末年始は3年ぶりに日本で過ごす事になります社長(筆者)はw 社長がいなくても現場は意外と回るのです(ようやくだけど。。w)。

とまあ、細かい弊社事情はさておき、今回はつい先日12月11日の日経朝刊に気になる記事が同時に掲載されていたのでそのお話。 その記事というのは下記の2つでして、、。
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<国際送金、即日決済に 〜世界の大手40行が結束し短縮>
日本の3メガバンクを含む世界の40行以上の大手銀行は国際送金を抜本改革する。
これまで3営業日ほどかかった決済期間を短縮して送金の当日に完結させ、手数料も銀行間で開示して透明性を高める。1~2年内の実現を目指す。

・・(中略)・・金融とIT(情報技術)を組み合わせたフィンテックの発達で異業種からの安い決済サービスの新規参入が増えたことに世界の大銀行が結束して対抗する。

・・(中略)・・資金移動の情報はリアルタイムで依頼人や受取人に知らせ、取引がどの段階にあるのか分かるようにする。中継銀行など複数の金融機関が関わって不透明だった手数料も銀行同士で価格を開示し、最初から顧客に提示できるようにする。手数料を比べやすくなるため、手数料の引き下げにつながる公算が大きい。枠組みは2年後の稼働を目指すが、一部は2016年9月までに先行して始める。


<「民泊」許可制に 自民小委が確認>
自民党の観光立国調査会の小委員会は10日に会合を開き、一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」について、厚生労働省が旅館業法で定める「簡易宿所」の基準を緩和して営業許可を出す方針を確認した。
今年度中に同法の省令を改正して解禁する見通しだ。訪日客の急増で都市部ではホテルが不足。政府は観光立国に向けた受け入れ体制の強化を進める。

・・(中略)・・現在はインターネット仲介を通じ、大半の貸し手が違法状態でサービスを提供している。厚労省は営業許可を実際に出す都道府県などが民泊の状況を把握し、トラブル時などに迅速に対応できるようにする。
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①については、「なんだ、やろうと思えば出来たんじゃん」と感じざるを得なかった、というお話。

「国際送金は中2〜3日かかるもんだ」とえらく長い事「金融常識」として我慢を強いられてきた「不便」に対して、今やすっかりビジネス用語として市民権を得た「フィンテック」を司る新興系皆様が、一昔前はマフィアやテロ資金の温床とも言うべき「地下銀行」などと揶揄された諸々所業を、エスタブリッシュにITを駆使してる事を前面に押し出しつつ「人の役に立ってます」と合唱しはじめた途端、既得権益にあぐらをかいていた旧態系皆様(大手銀行)がやむを得ず不便解消に乗り出した、というお話で、やろう思えば(やらざるを得なくなれば)あっさり解消できたんだ、やっぱりね・・・というのが概要である。

②については、既得権益をお持ちの皆様が「伝家の宝刀」だと思っていた許認可ラインセスに関して、当局からあっさり梯子を外されそう(新興系の方々にもあっさり宝刀が割り当てられそう)というお話。

「爆買い中国人」に代表される大量の訪日外国客が、既存の旅館やホテルがあまりに予約とれない(既存の旅館・ホテル業者が対応しきれない)せいもあって、インターネットで簡単に一般個人宅宿泊先を探すのが定着化してきた(そういう手配を生業とする「AirBnB」など新興系の方々が現れた)。
それに危機感をおぼえた既存旧態系の皆様(旅館・ホテル)が、「そういう個人宅宿泊は旅館業法に違反している」として抑えに入ろうと声を上げていたが(小声にしかなってなかったがw)、当局側があっさり「むしろ許可した方が国益にかなう」とOK出す流れになりそう、、というのが概要である。

どちらの話も、小粒ながら勢いある新興勢力が、旧態依然とした体制やら既得権益やらを突き崩した感があって、話を聞く限り庶民感覚では痛快の極みである事この上ない。

ところで経営の神様といわれるピーター・ドラッガーによると、「イノベーション」とは世の中により大きな価値、新たな価値や行動を生み出し、市場や社会に変化を与えるもの、らしい。

「イノベーション」と聞くと(文系な筆者だけかもしれないが)何か難しい技術や知識の発明の事かと感じてしまうが、ドラッガーによるとそれは「イノベーション」を起こす道具であって、実際の「イノベーション」とは「結果として生まれる、今までに世の中になかった新しい価値や新しい行動」を指すようだ。

よく例えに挙るのがアップルのiTuneやiPodで、「イノベーション」はiTuneの土台となってるネット技術とかiPodを作る機械技術ではなく、それらによって「消費者による音楽の買い方や聞き方が激変し、更には歌手や音楽に関わる会社の動き方や稼ぎ方が激変した事」が「イノベーション」と呼ぶべきもの、なのだそうだ。  

「イノベーション」を発明された技術や知識と捉えず、社会を変化させる価値や行動(を生むもの)だとすれば、上記の①・②はまさに「イノベーション」と呼ぶべきものだろう。

国際送金が即日で行われ(送金情報もリアルタイムに把握できて手数料も安くなる)、宿泊する先が空いている個人宅になる(高層ビルの夜景がキレイなマンションもあるだろうし、田舎の素朴な和風一軒家もあるだろう)。 
既存の旅館・ホテル・銀行も、これに対応して自らの動き方を(存在理由そのものですら)変えて行かざるを得ない。 何やらすごい話だ。

今年の11月にシンガポールで、今や大事業投資家になってしまった前職同僚と食事に行った際、彼が当たり前のように使っていたタクシー配車サービス「Ubar(ウーバー)」を体感してかなりの感動を覚えた。
ホテル入り口の前(出たとき客待ちタクシーはいなかった)で、彼がスマホをちょちょっと打つと、ポンの何かレスが帰ってきて、数分後に車が到着(なぜかジャガーだった、たぶん普通の個人車)。 で、降りる時も小銭支払いがいらない。 スマホのアプリ経由でクレジットカード決済されるらしい。 
ニュースや情報で「知っている」のと実際に体感して「わかる」のとの違いを久しぶりに痛感させて頂く体験であった。

その翌日に、インドネシアで盛り上がっている「GO-JEK」というサービスを知った。
渋滞が酷いインドネシア首都ジャカルタで庶民の足となっているバイクタクシー(現地語でオジェック、OJEK)のUbar型サービスで、Ubarのタクシーと同様にいつでも呼び出せ、しかも買い物代行やデリバリー、ケータリング、出張マッサージ師手配までやるらしい。
実際にUbarを体感した翌日だったので、その凄まじさ(凄まじく広がるだろうという予感)にとても衝撃を受けた。


11月にシンガポールで衝撃をうけ、12月に日経新聞の上記ダブル記事に感心させられ、、、筆者にとって今年2015年後半は、今世の中に起こっている「イノベーション」を一気に体感させられるとても印象深い期間となった。
(実際は各々もうとっくに起こっていて、筆者は遅まきながら今更知っただけ、という話だけどw)

なお、筆者の今年最初の「イノベーション体感」は、実はもう少し前に起こっていて、今年の6月あたりに「ドラッガーと論語」という本を読んだ時だった。

本著いわく「技術革新としてのイノベーションとは最も遠いイメージにあるが実際はイノベーションであるのが『割賦販売』」で、その代表例として農耕機具の割賦販売が取り上げられていた。


『ドラッガーと論語』(安藤歩著)のp100-101。 筆者がやっている事もまさかのイノベーション。。

なんと遅まきながら筆者がカンボジアでメイン事業とやっているのは、技術系イノベーションとは最もかけはなれたイメージながらも「イノベーション」なのだそうです。 自身でやっているので間違いなく筆者自身が「体験」している事が、事後的に「イノベーション」であると分かった、というお話。

ということで、ドラッガー関連書籍にお墨付きを頂いたと自分勝手に判断し、筆者のカンボジアメイン事業(農機の割賦販売)もドラッガー的イノベーション認定されたものと勝手に思い込ませて頂きますw  自分で思い込むだけなら人畜無害のはずですのでw

もしかしてUbar、AirBnB、フィンテック系と同じ括り・・・?  まあユニコーン(一角獣 ※)にはなれなそうだけどw ・・あくまで筆者の独り言ですが、、以上ですw

(※ユニコーン:企業評価額が10億ドル以上の非上場ベンチャー企業を指す最近の業界用語)