2014/09/21

進出セミナー かくあるべし

席に座って人の話を聞くのが実はかなり苦手な筆者が、かなり久しぶりに席に座って人の話を聞く側で参加したビジネスセミナーで、けっこう久しぶりに思う事あったので、今日はそのお話。


カンボジアは来週頭からPchum Ben(プチュンベン、日本でいうお盆)本番。

カンボジア民間企業の多く(弊社含む)は土曜半ドンなので、昨日土曜日午後から大型連休がスタートしている。

関与国の大型連休を海外移動で回避するのが習慣化されてしまっている筆者は、カンボジアお盆のPchum Ben本番の間は日本出張予定。

で、ちょうどその手前に開催された件のビジネスセミナー参加のため、今は香港に来ている。


今回の香港セミナーは、とある団体のアジア各支局メンバーが集まるサミット的な会合で、セミナーのメインは香港・中国の専門家による当地でのビジネス現状と進出アドバイス。

良い意味でのお付き合いの関係上(かつ香港がちょうど日本に出張する乗り継ぎ点にもなるので)参加させて頂いたが、現在カンボジアでの事業に特化している筆者としては、特に中国・香港の今に関するビジネスセミナーの内容自体に過度な期待はしていなかった。 





セミナーは大方の予想通り、中国・香港の進出支援に手練のベテラン弁護士・会計士先生方による立石に水なスピーチで快調に進んで行く。 

これだけだと典型的な進出推奨セミナーだが、この団体は個性豊かな企業オーナーが積極参加していることをウリとしている。 その個性豊かな企業オーナーの数名が、先生方の名演説に紳士的かつ攻撃的に噛み付いた に質問を投げかけた。




「類似商標、いわゆるパクリが横行する中国で、その対処法を法的に云々、とおっしゃいますが、実際に訴訟やって勝てる見込みと勝った事例はあるのか。 その間の弁護士費用はかなり高くつくはずだが、それこそが進出企業に抵抗を諦めさせている要因となっている、という実情はないのか。 先生の見解を伺いたい。」

「会社や工場進出において、後で役人にとやかく言われないようにするために事前準備の徹底が重要、とおっしゃいますが、実際ギリギリまで何も言わない役人が許認可期限の直前となって無理難題を押し付けて来る場合、その無理難題を事前にどう予測できるのか。 実際に予測して事前アドバイスもらえるのか。 先生の見解を伺いたい。」

(「 」は筆者記憶ベースの質疑内容、正確性については平にご容赦を・・)




主な質疑の発信者は、製造企業17社をグループ傘下に持ち、中国でも3社・12年操業して、グループ年商1000億円を超える豪腕社長。 中国事業を全て黒字で完結させ、早々に見切りをつけて現状は撤退戦の真っ最中、これからは他国に拠点をシフトさせるらしい。

その実体験に基づく生々しいツッコミ攻撃 質疑、礼節は保ちつつも辛辣なコメント。
それに対してさすがの”いなし”で対処するベテラン先生方。




大局高所から進出を推奨する専門家と、実際に進出して現場で辛酸をなめている企業家との紳士的なガチンコ舌戦。 筆者的にはなかなか見応えがあった。 

こういう話をアリーナ席から観戦しつつ、そこに垣間見える何かをつかむ、、という事ができるのであれば(こういう話を観戦できる場であれば、の話だが)、この手のセミナー出席に時間を費やす意義はある、気がする。 

そもそも、こういう議論を意図的に誘発させる仕組みを取り入れるセミナーがもっとあってもいい、気もする。
 
とある立ち位置にいる人だけが一方的に聴衆に対して意見を発信する形では、発信する情報にバイアス(偏り)が生まれてしまう事を原理的に回避できないからだ。




他人に進出して欲しい人は、当然進出するメリットを語る比重が多くなるだろう。

自分が進出して上手くいってない人は、わざわざ自分の失敗談を他人に披露しないか、進出のデメリットを多く語るだろう。

自分が進出して上手くいっている人は、儲かる話をわざわざ他人にしないだろう(大多数は)。

各々が自己便益を最大化する行動を選択するのが営利活動であるビジネスの原則だから、各々の立ち位置(ポジション)によって他者を誘導したい方向は異なってくる。
結果、情報発信の力点を置くポイントも必然的に変わって来る。

上記の傾向は善悪で評されるべきものではなく、むしろ当然の帰結として聞き手の想定に織り込まれるべき内容だ。




だから話を聞く側としては、話し手のバックグラウンドや、どういう立ち位置(ポジション)にいるか(≒何で食っているか)を把握して、話し手の発信方法に含まれる情報バイアスを自己修正するフィルターを持つに越した事はない。 
が、そのフィルターを万全に準備するのはなかなか難しい。


来週久しぶりに170人近い人前で話す機会がある。 及ばずながら、出来る限り話を聞きに来て頂く方々のポジションに立った話をしようと思っています。 ・・できるかな。





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